今回残念ながら消えたクルマはBMW3シリーズ、アウディA6、フィエスタの3台となりました。BMWは代わりにM235iが順当にランクインしましたが、メルセデス・アウディ・レクサスからは選ばれず日本で人気の”プレミアムブランド”車種の評価がどうやらあまり芳しくないようです。まあ上から目線で恐縮ですが、プレミアムブランドのクルマだからといって特別な作りをしているわけでもなく、実際のところは意外に基本設計が古かったりしますから、クルマ好き目線から言えば当然の結果といっていいかもしれません。
この企画の歴代の受賞モデルを見ていると、地元アメリカ車以外ではホンダ、VW、BMWといったメーカーのクルマ作りが他よりも高く評価されているようです。そしていよいよこの3強の中にマツダが堂々の2年連続2台受賞で割って入った格好になりました。スポーツカー以外での2年連続ダブルですからいよいよ「マツダの時代」なんですかね。さて今年の10台の内訳はアメリカ4(CTS、コルベット、マスタング、テスラモデルS)、日本3(アテンザ、アクセラ、アコード)、ドイツ3(2シリーズクーペ、ボクスター/ケイマン、ゴルフ)となりました。かつては市場ごとに好みが明確に分かれていたものですが、この10台の内で日本車以外の7台は日本でもかなり評価が高いモデルと言えます。
ただし日本車3台に関しては日本とはかなり仕様が違っていて日本での評価とはいくらか温度差を感じるところもあります。北米版のアコードはホンダのNAエンジンが気持ちよく回る非HVが主力です。かつて高回転エンジンの性能(ピストン速度)でBMWを完全に出しぬいたホンダとアルファロメオですが、アルファがスポーツモデルの4C以外を撤退させているアメリカ市場では、俄には信じ難いですがホンダエンジンはBMWのものと同等以上の高い評価を得ているそうです。
アクセラも日本仕様とは違っていて、2.5Lエンジンを積んでいるモデルがイメージリーダーとして君臨しており、シビック・カローラ・フォーカス・エラントラといったアメリカ市場を代表する「スモールカー」を圧倒するパワフルでハンドリングが楽しいクルマとして定着しつつあるようです。アメリカ雑誌のレビューで紹介されるアクセラのグレードは2.5Lモデルばかりです。アテンザに関しては日本のガソリンモデルと同じ排気量になりますが、日本では「アテンザ=ディーゼル」のイメージが定着しつつあるので、クルマの存在意義もまた大きく違ってくるようです。
アメリカに限らず海外でアテンザやアクセラが評判なのにはもう一つ理由があって、どうやら「スカイアクティブ・ガソリン」はハイオク仕様だと、その能力が飛躍的に高まるという点にあるようです。日本のメディアではハンドリングやデザインが主な美点として言われますが、米国メディアではガソリンエンジンのフィールがずば抜けて素晴らしいといったレビューが並びます。「ドライビングの楽しさ」という点では日本でも米国でもかなりの高評価を受けていますが、米国メディアは日本以上に特にこの数値化できない点をやたらと持ち上げる語句がレビューに並びます。
「アメ車」という差別用語があるように、日本のユーザーの一般的な心証としては、アメリカ車よりもドイツ車のほうが「ドライビングの楽しさ」に優れているイメージがあります。そして人によっては「日本車はドライビングがつまらない」と言いますし、マツダ、スバル、日産、レクサスのファンならば日本車もドイツ車に全然負けてないと思うでしょう。CAR AND DRIVERやMOTOR TRENDといった米国メディアも同じように「ドライビングの楽しさ」を非常に高く評価しています。そしてその中でほぼ評価が固まっているのが、スモールカー(Cセグ)ならばゴルフかアクセラであり、ミディアムカー(Dセグ)ならばアテンザかフュージョンと、それぞれに選ばれた2台がずば抜けた評価を獲得しています。ちなみに他のクルマに関しては非常に手厳しいです。
米国メディアのこの1年の「楽しさ」評価における変化として、これまではドイツ車と日本車が先行していた部分があったけど、今ではアメリカ車が猛烈に追い上げて来ていると判断しているように思います。どちらも欧州車のテイストを取り入れてグローバル車となったキャデラックCTSとフォードマスタングに対しては、キャラ変更したばかりなのにドイツ車やレクサス&日産に張り合えるとすでに太鼓判を押しています。新型マスタングがBMWみたいな高速安定性とハンドリングそしてしなやかな乗り味を持つと言われても、乗ってみるまでは信じられないですが・・・。
さてBMWは3シリーズが陥落して代わりにM235iが登場しましたが、この点では特にアメリカ雑誌の評価と日本の評価は近くて、とても親近感が湧きます。M235iは日本のメディアも絶賛でしたし、多くの自動車ファンも気になって仕方がないモデルです。しかしタイトなボディを持つスポーツクーペこそがBMWのアイデンティティだとして、メーカーは特別なCMを作成するなどプロモーションに努めてきましたが、「BMWは高級車」と頑なに信じている日本の多くの成金ユーザーにとっては残念ながら全く響かなかった(受け入れられなかった)ようです。ボディが小型で否応なしに車格が低く見られ、エクステリアも今どきのクルマにしては質素なことがかなり嫌われたのでしょうか、とりあえず無難に4シリーズにしておこうという判断が働いているようです(全く無難じゃない気もしますが・・・)。
日本市場においては、クルマ好きの食指が動くM235i(615万円)よりも420i(511万円)の方が約100万円も安いというのも大きいのかもしれません。北米ではM235iも4シリーズの最廉価になる428iもどちらも400万円ほどで価格差はないです。北米では228iクーペというモデルがあって、こちらは320iと並んで300万円程度のブランドの入門価格で販売されています。これくらいの価格でBMWが手に入るアメリカはつくづく羨ましい国です。最近のガソリン価格の下落も日本よりもダイレクトに実感できるほどだとか・・・。
さてだいぶ取っ散らかった内容になってしまいましたが、アテンザ&アクセラの2年連続ダブル受賞という快挙を記念して、マツダには日本市場で2.5LスカイアクティブGの限定車として、ハイオク指定ヴァージョンの発売を期待したいと思います。おそらく右ハンドル仕様(豪州、英国向け)のものがあるでしょうから、そんなに手間も掛からないのではないでしょうか。ライバル車はHVや湿気たエコ・ターボのエンジンが多くなってきているので、マツダにはその流れに逆行して、アメリカ雑誌に絶賛されているマツダの「普通乗用車」を日本のユーザーにも楽しませてもらいたい気がします。
リンク
「最新投稿まとめブログ」