群馬〜長野県境の碓氷峠は観光資源の活性化が凄まじく、親子連れのミニバンが大挙して押し寄せ観光バスも走るので、休日は渋滞がたびたび発生し、ほとんど楽しめない峠になってしまいました(何を楽しむ気だ?)。軽井沢まで登ってしまえば輸入車がたくさん見られるハイソサイエティな避暑地なのですが、やはり混雑が酷く最新のスーパースポーツを所有するセレブの姿はまったくといっていいほど見られません。
今回は新型アテンザが発売されて初めての夏ということで、各地で3代目アテンザが目撃できるだろうと予想していました。しかし東京近郊でこそ見かけるものの、埼玉から群馬へ入るとほとんど見かけることはありませんでした。これはあくまで憶測ですが、3代目になりアテンザもいよいよクルマのキャラクターだけでなく、購入層も大きく変わってしまったように思います。
従来のアテンザはクラス最軽量の1400kg台の車重ながら車体剛性も高く、スポーツカーのような峠走行ができるセダンとしてその地位を築いてきました。海外市場での売れ行きも上々で、大ヒットした初代からもなお長足の進歩を遂げています。新型では、ただの日本発信の峠向けセダンに留まらず、プレミアムセダンの市場を狙う装備とデザインが大々的に注入されクラスレスな世代を象徴するクルマになりつつあります。
トヨタや日産と違ってマツダの「改良重視」のクルマ作りは、ドイツメーカーを彷彿させる手法であり、来年には新型アテンザもMCを迎えて弱点(足回りか?)を徹底的に直してくることでしょう。ただ進化にも方向性というものがありまして、新型アテンザが向いている方向は斜陽のドイツセダンが向かう「破滅への道」のような気がするのが気になります。
その兆候として、新型アテンザは最近のドイツセダンのように日本のワインディングロードから姿を消しつつあるように感じます。ワインディングを走りたい人はセダンではなくスポーツカーを選択し、それをそのまま街乗りでも使う人がトヨタ86発売以降さらに増えてきたように感じます。いくら新型アテンザでもワインディングの走行性能はスポーツカーには及びません。一方で最新のスポーツカーに比べてセダン(新型アテンザ)のコクピットが快適かというとそうでもなく、ルーフを低めに作ったセダンが大流行している現状では、後席の居住性を考えなければセダンもスポーツカーもほぼ同等です。
さらに現代人の肥満の増加もセダン不人気に拍車をかけていると思います。スポーツカーもセダンもそのシートは肥満体型の人にとっては苦痛と言えるスペースです。実際に街でじっくり観察していると、肥満体型の人はミニバンやSUVのコマンドポジション(運転席が高くて広い)のクルマを選んでいるのがよくわかります。アメリカで今SUVが大人気なのも突出した成人肥満率の高さにその理由があるように思います。
結論としてはアテンザの開発理念は多少の方向転換を行っていますが、それ以上に外部環境の変化によってクルマのポジションが大きく変わってしまっています。例えばトヨタ86の大ヒットにより従来のアテンザが担ってきたワインディング4シーターのポジションは完全に奪われたようです。代わりに新型アテンザはドイツ車を初めとした輸入車セダンからシェアを奪いつつあります。しかしそれもまたドイツメーカーがこのクラスのセダンの開発を停滞させているという現状があり、顧客満足度が極めて低い車種が多いことが原因なわけです。
念押ししますが、マツダとしてはアテンザのコンセプト変更をそれほど強くは意図していなかったと思います。それが「86→アテンザ→ドイツセダン」の玉突き乗り換えに見事ハマった形になり台数は相当に出ていますが、予期せぬユーザー層の入れ替えが起こっているようです。これが一巡してまた外部環境が変わったとき新型アテンザがどう評価されるかがとても興味深いです。それにしても「86→ドイツセダン」の乗り換えはイメージ的になかなか起きにくいと思うので、結果論ではありますがトヨタとマツダによる見事な連携プレーですね。もちろんその裏で「Aクラス・ゴルフ→プリウス」で相当やられているのですが・・・。
↓多くの酷道を2代目アテンザで走破しました。なんら問題は無かったですね・・・。