GT-Rではどうしても追いつけないE63AMG-4MATICの魅力とは、やはり「メルセデスを下品に乗りこなす」という非日常な世界観ですね。車重2トンの大型セダンが0-100km/hで4秒を切ってしまうという、ナンバープレートが付いてるクルマの限界に近い性能を発揮しつつ、後席にゲストを招ける「高級車」としての性能も付いてくるのだから、考えようによってはGT-Rや911カレラ4Sよりも断然にお買い得?と言えるかもしれません。
一方で開発が進むGS-FやBMW M5は、ハンドリングに優れるRWDにこだわっているようで、これはブランドの選択にもよるのですが、やや気になるのが、最近では「スモールカー」でもAWDターボで「加速」を強調したモデルが流行していて、0-100km/hが4秒台を出すモデルがいくつもあることです。ゴルフRとアウディTT-RSのVWグループとA45AMGもメルセデスが「ポスト・ランエボ」を巡って激しく争っていますが、レクサスやBMWにとっては、1500万円クラスのV8を搭載した官能のスポーツセダンが、半額以下でしかない直4ターボのスポーツカーに加速で負けてしまうのは、なかなか目障りなことかもしれません。
スポーティ・モデルも昔のような派手なスポイラーを付けてアピールする時代から、クルマが持つ「格式」や「真面目さ」の土台の上に高性能なスペックが載るという「ギャップ」が大きなポイントになりつつあるようです。そこで「鼓動」という真面目なデザインテーマを獲得したマツダにとっても、このコンセプトがスポーツモデルの展開にとって有益であることを認識しているようで、そろそろ市場を「あっ」と言わせるハイパワーモデルを登場させるのではないかという期待もあります。
マツダの従来のスタイルだと、アクセラのスポーツハッチバックをベースにする欧州向けの「ホットハッチ」がすぐに連想されますが、どうもこのスタイルは「時代遅れ」なのでは?という気がしないでもないです。日本はスポーツ・チューンのトレンド発信地でもあり、その日本で高まりを見せているのは「ホットハッチ」ではなく、ややコンサバ化した「VIPスタイル」です。大きな車体に個性豊かな大排気量エンジンを搭載していて、広い車内で「人とコミュニケーションを図れる」「誰かを乗せてみたくなる」・・・そんなクルマ文化へと移行しているように思います。
そのシーンの最先端にいるのが、やはりメルセデスで、系列のチューナーを多く抱え、欧州・北米・東アジアといった主要地域で大きな存在感を放っています。日本でもシーンの高まりでドイツやアメリカのチューナーからパーツがたくさん輸入・販売されています。メルセデスの専門雑誌に所狭しと展開される、「ブラバス」、「ボクスター」、「インデン・デザイン」といったチューナーはそれぞれに独立した世界観をはっきりと持っていて、同じW212(Eクラス)の製品を見比べても、全く別のクルマに見えてしまうほどに洗練されています。
今後はマツダもこのメルセデスのような路線を上手く歩まない限り、北米での飛躍はなかなか実現しないでしょう。アメリカで好まれる車格から考えてもアテンザを中心に据えた「アフター・シーン」をあと数年の内に構築できるかが、ブランドのさらなる向上のためのポイントじゃないかなと思います。そのためにもデザインのみならず、クルマの基本性能(加速)をメルセデスに肩を並べるくらいに高める必要もあるでしょう。一つの方法として、新規に開発中のロータリーエンジンをアテンザのボデイに載せて、350psで0-100km/hで5秒を切るくらいのタイムが達成されれば、マツダブームにいよいよ火が付く予感があります。技術的にもエンジンさえ完成してしまえばそれほど無理なく発売することができるでしょう。
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