アテンザ戦略の転換
なぜGJアテンザが欧州でバカにされるのか!? マツダ幹部にとっては悔しいけども、リーマンショックの現実の前には、GJアテンザの簡易的な設計は非常に妥当な戦略だったようだ。しかし円高も収まり業績が大きく改善したので、次世代アテンザは「本気モード」で作っているらしい。そしてそれはGJの延長線上にあるものではなく、根本的に別のクルマになる公算が大きい。GJアテンザ自体はジワジワと売り上げを伸ばしているようだが、先代以前からアテンザが売れていたドイツ、イギリス、中国、アメリカでは予想どおり不人気に。
愛されないセダンは悲惨
セダンの不人気は世界のどこの市場でも起こっている当たり前の現象であり、アコードもスカイラインも3シリーズもグローバルでの販売は後退気味。そんな状況なのでGJアテンザだけが悪いということはない。GJアテンザが専用シャシーを使わずに、アクセラと共通のシャシーになったという残念な設計に関しても、アコードやBMW3シリーズも全く同じ状況なので、アテンザだけが特別に性能が低下したということにはならない。ただ単にアコード、3シリーズが売れないのとほぼ同じような状況でGJアテンザは売れていないだけだ。ホンダ、BMW、マツダそれぞれに・・・メーカーの愛情不足が原因であることが否めない。
かつてのマツダのセダン愛
「メーカーが愛情を注いだセダン」ってどんなクルマなのか!?やはりマツダだったらGG/GHアテンザでしょうか。そのちょっと前にあったユーノス800/ミレーニアも4WSやミラーサイクルユニット、4輪マルチリンクといったレクサスやメルセデスのフラッグシップに肩を並べるような豪華装備でした。ミレーニア、GGアテンザが併売されていた頃は、マツダセダン黄金時代で、2005年には過去最高の1000億円超の利益を出していました。ちょっと大げさかもしれないけど、メルセデスEクラスVSミレーニア、BMW3シリーズVSアテンザという、欧州を代表するサルーン2台を露骨に意識した対立軸をマツダが打ち出していて、「アマティ」というプレミアムブランドを北米で開業する計画もあったとか。
フォードに振り回される・・・
しかしミレーニアの後継モデルは開発されず、フラッグシップに押し出されたGHアテンザは、3シリーズには大きすぎて、Eクラスには小さすぎてという中途半端な立ち位置での開発を余儀なくされました。アシも前期は硬いままだったのが、後期ではかなりマイルド(それでもトヨタよりは硬い)になりました。前期から後期になって静粛性が大きく上がり、ハンドリングも非常に上質なものに変わり、次世代モデルへの期待も高まっていたのですが、マツダを倒産一歩手前まで追い込むような未曾有の円高で、全く利益がでなくなり廃止。マツコネも電気式サイドブレーキも間に合わないまま、GJアテンザが始まる・・・。
スカイアクティブはSUV戦略がメイン!?
2012年から先のマツダはアテンザを特別なモデルとしてこだわることをやめてしまったようだ。デミオからアテンザまで同じナビシステムが使われ、インテリアの満足度もアテンザだから特別ってものでもない。どのメーカーのモデルでも、フラッグシップはその組織のトップが乗るクルマだから必死でいいものを作る。だからクルマに詳しい人は、とりあえずはファーストカー選びで迷うことはなく、自分に合ったブランドのフラッグシップモデルを黙って買う。グローバルで中型以上のクルマを販売しているメーカーはそれほど多くない。その中でマツダ、スバルは今では最も手軽にフラッグシップが買えるブランドだ。だからアテンザは放っておいても売れるモデルなのだけども、マツダが十分に愛情を示していないと販売台数はガタ落ちする。裏を返せば、アテンザの売れ行きが鈍いのは、マツダが満足できるクルマに仕上げていないというユーザーからの評価だ。
欧州王者を撃破
「金井さんの黄色いアテンザ」は欧州でも中国でもバカ売れした。現行のGJアテンザは年間11万台程度の販売だけども、GGアテンザは4年で100万台を突破したから、最初の4年で平均で年間25万台ペースで売れた。それだけ破格の成功を遂げればマツダも過去最高益を出すのも納得。年25万台ってのはBMW3シリーズの販売台数を超えてしまっている。メルセデスCクラスもパサートもモンデオも勝てなかった、Dセグの欧州絶対王者が、欧州外のクルマにあっさりやられた・・・。これまではC/Dセグのプリメーラやプレリュードくらいしか欧州では評価されていなかった中型車部門に彗星のごとく現れて、王座をあっさり奪った!!
中国での成功が今のMAZDAにとって大きな財産!?
もちろんマツダの得意技は「パクリ」だ。GGアテンザもアルファロメオ156の成功に大きな刺激を受けて設計されている。絶対王者のFRのE46系3シリーズを倒すために、FF車のサスペンションにプレリュード譲りの工夫を凝らしたアルファ156が大ヒットして、縦置きエンジンのアウディA4も同じギミックを使ってBMWを追い込む。その2台の成功をGG/GHアテンザが真似て、プジョー407も取り入れた。・・・メーカーの愛情を目一杯受けて「最良」を目指した設計をもつ、これらのスポーツセダンはいずれも「名車」として今も高い人気を誇る。ホンダ、アウディ、アルファロメオ、プジョーといった90年代/2000年代の欧州で大成功を収めたグランドツアラー・ブランドの一つにMAZDAが加わり、これらのどのモデルよりもGGアテンザが素晴らしい!!という評価を受けた。特に中国COTY受賞、第一汽車の『紅旗』ブランドにマジェスタとともにアテンザが、世界のベストセダンとして選ばれたことは素晴らしい!!金井さんの執念が実ったと思う。
金井さんの遺伝子を持った中国車が日本に襲来!?
GJアテンザが発売されても中国の提携工場ではGG/GHの二世代のアテンザの製造も同時に行われた。BMWの本丸である3シリーズを撃破したアジアのクルマとして評価が高い。そんな中国のクルマ好きに現行のGJアテンザはどう映っているのだろうか!? 中国メーカーで勢いがある吉利汽車は、ボルボとの共同開発でGGアテンザみたいなFFセダンを復活させた。新型ボルボS60として2019年くらいには日本でも発売されるらしい。そのタイミングで吉利汽車の日本導入もあるのだろうか!?その時に・・・GJアテンザ、アコード、カムリHV、レクサスES、ティアナといった日本の「セダンもどき」はどんな恥を晒すことになるのだろうか!?