2018年06月19日

フォードのラインナップ大幅縮小 と MAZDAの価値



フォードが北米向け乗用車ラインナップをほぼ全廃へ

  マツダはほんの10年ほど前までは、フォードのB〜Dセグメントの開発の中核を担っていました。デミオ、CX-3とCX-8はフォード時代に設計されたシャシーが継続して使われていますが、アクセラ、アテンザ、CX-5、ロードスターは「スカイアクティブ」を名乗るマツダオリジナルシャシーを使うようになっています。フォードでは、デミオ、CX-3と同じシャシーを使うフィエスタや、旧アクセラ用のC1シャシーを使うフォーカス、C1シャシーを改良してボルボ主体で作ったフォードEUCDシャシーを、さらに改良して作ったフォードCD4シャシーを使っているフュージョンを順次廃止して、プレミアムなリンカーンブランドと、『マスタング』と、新規開発中でスバルXVに近いモデルだと言われている『フォーカス・アクティブ』以外の乗用車モデルは廃止するとのこと。


マツダの微妙な立場

  フォード、マツダのプラットフォームについて調べてみると、CX-8は、GGアテンザ、GHアテンザと基本的には同じ『CD3シャシー』が使われています。旧アテンザ用のCD3シャシーは、フロントにDWBサスが組み込まれるなど、ハイスペックを実現。欧州でも高い人気を誇りましたが、高コストがネックとなっていて円高が止まらずにやむなく廃止されました。GJアテンザに使われるのは、アクセラを基準車とする『スカイアクティブシャシー』であり、実質的にC1シャシーの後継で、これを使うCX-5が、『CD3』を使うCX-8に乗り味でハッキリと差をつけられているところをみると、GJアテンザが欧州や北米などの既存市場でやや苦戦しているのも納得です。マツダには耳が痛い話ですが、アテンザに関してはGJになって確実にクルマのレベルが下がっているようです。


天才求む・・・

  Cセグメントのライバル、例えばスバル全モデルとか、VWゴルフや、トヨタプリウス/C-HRなどを相手にするぶんには、『スカイアクティブシャシー』の能力でも十分に蹴散らすことはできるのかもしれない。実際のところ、スバル車やプリウス/C-HRくらいの実力があれば、ブランディング次第では十分に上のセグメントのドイツ車にも十分対抗できてしまう。しかしマツダには、トヨタやスバルと同じ戦略は合わないだろう。これまでもトヨタやスバルと同等のスペックのモデルを作ってきたけども、実際の販売においては不可解な差が生まれることもあった。


世界の流れ

  話を整理すると、まず最初にホンダが北米主力3モデル(アコード、CR-V、シビック)で同一プラットフォームを採用。この流れに乗って日産がCセグとDセグを統一した『CMF-C/D』を開発。まだ北米向けのアルティマ/マキシマなどは旧シャシーのままですが、ルノーのDセグのタリスマンはすでに『CMF-C/D』化されています。そしてトヨタもTNGAの横置きシャシーに置いて、プリウス、カムリ、RAV4などの統合を行っています。スバルは最初からインプレッサとレガシィ他BRZ以外の全てのモデルを同じシャシーで開発。マツダも北米で成功しているこれらの日本メーカーの後を追うように、アクセラとアテンザのシャシーを統合したわけですが・・・ちょっと流れがおかしくなります。

世界は狭い

  CD4でC/Dセグを賄う予定のフォードがまさかの解体。北米の乗用車部門では日本勢に大きくシェアを取られ利益が出せないし、将来的に大きな収益を上げたり、日本勢に技術的に勝てる見込みもないと判断したようです。開発屋のマツダやボルボを手放してしまった以上は仕方のない決断かも。C1を改良したEUCDで一時はフラッグシップの『S80』まで開発していたボルボですが、それらを全て捨てて新たに吉利汽車と共に、横置きエンジンの上級シャシーを開発しました。ここ数年、世界の自動車メーカーで開発されているフロントエンジン横置きエンジンシャシーは、いわゆる北米向け日本勢のCセグベースのシャシーがスタンダードであり、経年が過ぎた北米向けのFF大型シャシー(マツダCD3など)を除けば、例外的にそれよりも高い性能を持つものは、SH-AWDを標準装備するホンダ・レジェンド用と、このボルボ&吉利汽車のシャシーだけになりました。


マツダの選択肢

  マツダとしてはこの状況の中で、現実的には3つの選択肢があって、1つは『スカイアクティブ』=Cセグシャシーでこれからも全モデルを作る。2つ目はボルボのように、スペース効率に優れるFFシャシーを高コスト化して、Cセグに集中する世界の流れと差別化する(旧アテンザCD3のようなシャシーを新たに作る)。3つ目はメルセデス、BMW、トヨタ、日産、キャデラックなどが守り続けるFRシャシーを開発&採用する。世界には他にもスバル&アウディのように縦置きAWD高性能シャシーで差別化するという方法もあります。


レクサスの現実

  報道や藤原常務の話を聞く限りではどうやら3つ目の「FR化」が最有力になりつつあるようです。簡単に言ってしまえば、センティア&ユーノスコスモの復活ですけども、これは社内の士気も上がるし、ファンも喜ぶ結論なのかもしれません。しかしメルセデス、BMW、トヨタ、日産などFR車をそれなりの規模で作ってきた主要4メーカーでも、FR車のシェアは大きく下がってきているのが現状です。キャデラックやジェネシス&キアも独自に傘下サプライヤーで縦置きミッション開発を進め、FRによる高級モデルの拡販に勤めていますが、頼みの北米市場でもレクサスなどはすでに販売の中心はFFモデルであり、中国市場にもFFのESを主力車種として勝負をするなど、FR車に社運をかけるのはリスクが高いどころか、不可能な状況にあります。


世界が停滞しているときこそ、マツダ

  現実的にはジャガーやアルファロメオのように、フラッグシップはFRで作り、販売の中心はFFが担うというビジネスモデルは、レクサス、インフィニティ、メルセデス、BMWも同じ。これらの既存勢力が、今後ボルボ&吉利汽車によって北米、中国、日本などの主要市場でシェアを奪われるということが起きるならば、マツダはボルボの尻馬に乗って、再び「金井の黄色いアテンザ」を復活させればいいでしょうし、ボルボが失敗すると思うならば、ジャガー、アルファロメオ追従路線を取ればいいと思う。しかしどちらにせよ、うまくいきそうな雰囲気はないかも・・・。しかし、世界が尻込みする状況になると、突如として目立ってきたのがマツダだ!!いまこそFR車を大成功させて、「レクサス、メルセデス、BMWはクルマ作りがわかっていない!!」くらいの大放言を藤原常務の口から聞きたい。







posted by cardrivegogo at 08:09| Comment(0) | マツダの戦略 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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