2018年05月24日

前回に引き続き、マツダとBMWの歩み。


前回までのあらすじ  

  1950年代に四輪の創業を再開したBMWが、1961年のノイエクラッセで、クラシカルな高級車ブランドから、フォードやホンダのような技術革新性で世界の自動車産業を刺激するブランドへの変化、1970年頃からドイツの名門メルセデスをターゲットにした高性能車開発に邁進。その勤勉さゆえに、1980年代〜2000年代前半にかけてBMW3シリーズ(E30,E36,E46)は欧州Dセグの頂点に君臨し続けました。その10数年にわたるBMWの支配的な地位こそが、今日のBMWのブランド力を決定づけた礎であり、今もその時の名声を引き継いだブランディングを行なっています。

E36、E46を狙う過当競争へ・・・

 欧州市場の覇権を狙って、英国ローバーは世界を席巻しつつあったホンダとの提携に成功し、90年代にはOEM車の導入に成功します。フェラーリのような4輪DWBを配したホンダ・アコードをベースとする「ローバー600」を1993年に発売し、おもむろにE36の市場に襲いかかります。このクルマは目論見通りに、英国ローバー史上最大のヒット作となりますが、BMWが自らローバー買収に動き、E46発売の1998年に生産中止になります(ホンダの勢いにビビった!?)。


ヒット作続々登場・・・

  当時はジャガー、ボルボ、欧州フォードは同一資本で提携していて、マツダのGEプラットフォームを使った兄弟車を各ブランドから発売。E46のデビューより一足早い1997年に発売し末期のE36に挑むも・・・ホンダのような革新性もなく微妙な結果に。さらにアルファロメオも1997年にBMWの『メタル仕様ストラット』に物理的にハンドリングで優位に立つために、先代(155)から大きくコンポーネンツを一新し、ホンダの手法をそのまま使ってフロントサスにDWBを配するハンドリングマシン化を断行。見事にライバルに先駆けてE36、E46の牙城に最も接近します。これがアルファロメオ最大のヒット車『156』です。


アテンザ登場

  なぜかFRの3シリーズにFFで挑むクルマが多い中で、3シリーズのコンポーネンツをパクってコピー車を作ったのがトヨタ。北米では初代ISとして発売されたアルテッツァです。スポーツセダンムーブメントが絶頂の1998年頃にマツダはバブル崩壊の余波を喰らい自主再建を諦め、フォードの傘下に入ります。そしていよいよ・・・ローバー、アルファロメオが見つけたE46攻略への道を辿って、2002年にマツダが復活を賭けて「最後の一台」だと金井誠太主査が心中覚悟で設計したGGアテンザが登場します。ちょっと遅れてプジョー407もフロントサスをDWBにして参入します。このころ日本では、E36/E46にそっくりの設計とか言われたトヨタ・アルテッツァが話題でしたが、世界で100以上の賞を総ナメにしたのがGGアテンザでした。


再びBMWの方針転換

  1990年以降、時代の寵児として持て囃されたBMWですが、2000年代に入り一気に「現実路線」を進みます。バブル崩壊してもなお、ITバブルの北米に軸足を移していたトヨタ、ホンダの成長は続き、この2社のクルマ作りが生き残りのために方針展開を目指した名門ドイツブランドに「悪い影響を与えた」と福野礼一郎さんは「世界自動車戦争論」で断言しています。アウトバーンで圧倒的な性能のクルマはアメリカで商品価値を持たない。トヨタのようにユーティリティと耐久性で十分売れると判断したメルセデスとBMWは、2000年以降トヨタ基準のシャシー、エンジンと見受けられる期待はずれのクルマを連発したとされます。


ドイツで売れないけど日本で売れる

  高性能で評判だったBMWのクルマ作りの質が急激に落ちると、目に見えてドイツ市場の売上が落ちます。2006年にはとうとうアウディに抜かれ、ドイツつ市場で4位に陥落します。ドイツを諦めたBMWは潤う東アジア市場に照準を定め、残クレ導入などで販売拡大を目指し、ドイツではボロクソに言われていた頃の2007年に日本市場ではBMW歴代最高の販売台数を記録します(今もこの記録は抜かれていない)。


BMWの経営上の判断は正しかった

  ノイエクラッセが通用する時代は完全に終わった。BMWが頂点に立ったことで巻き起こった過当競争に参入した各モデルは、その後まもなく起こったリーマンショックによって木っ端微塵に消えてなくなります。アルファロメオもプジョーもマツダも、赤字に転落するや完全に「高コスト」すぎるBMW対抗モデルをすぐに廃止します。2代目アテンザは予定より半年早く終焉を迎え2012年に現行のGJアテンザに変わります。アクセラと同じ水準に落としたシャシー・・・これが今のアテンザの偽らざる姿です。

BMWとマツダの2010年代・・・

  2007年以降のBMWと、2012年以降のマツダは、「いいクルマ」を作ろうとはしていますが、「高性能車」へのこだわりは相当に失われています。かつてB、C、Dセグメント及びエンジン開発において、旧フォード陣営の最大の貢献を果たしてきたマツダの技術力は高く、前々回の投稿でも述べましたが、マツダ車は『局地戦』においてBMWを圧倒しています。それではBMWは、マツダが競合してこない上級セグメントにおいて販売を伸ばしているか!?というと5シリーズ、7シリーズは相変わらずの苦戦。頼みの北米市場も販売低迷が目立ち、X1に続きX2が投下されました。中国市場の伸びによって、グローバルで200万台規模に成長していますが、伸びている中国市場の主力は、すでにFF化されている現地生産の1シリーズです(これはBMW車と言えるのだろうか!?)。


技術に注力できない・・・経営環境がシビアすぎる

  マツダと競合して勝てない小型セグメントの販売比率がなぜか伸びています。ブランド&広告戦略を駆使して、東アジア、東南アジアで販売を大きく伸ばしています。日本の2分の1程度の韓国市場では、年間に日本市場の3倍のBMW車が売れる。タイでも人口&GDPから考えても、日本より圧倒的に高いシェアを確保しています。日本メーカーがあまり力を入れていない市場に、日本車に勝てないレベルの小型車を売りさばくという戦略。残念ですがこれがかつての名門BMWの変わり果てた姿です。




新しい3シリーズ・・・何も見えてこない

  E90、F30と続いた悪名高きシャシーに別れを告げて、5シリーズと同じプラットフォームに変わった新型3シリーズです。1.5L直3ガソリンの新興国向け(欧州ベースモデル用)を残しつつも、アメリカ市場や日本市場で、メルセデス、レクサスとの対峙は避けられ無いので、「マイルドHV」を装備したPHVを「技術」の柱に立てているようです。来年以降にマツダも上級モデル用の「マイルドHV」の投入が公式に発表されていて、2021年頃をめどにアテンザのフルモデルチェンジが行われます。果たしてそのタイミングで対峙する3シリーズとアテンザは、どんな立ち位置になっているのだろうか!?少々ざわめきが止まらない・・・。



posted by cardrivegogo at 03:13| Comment(0) | クソな話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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