2018年03月13日

初代アウディTTはなぜ横転したのか!?




エモーショナルだけで日本車に立ち向かった名車

  1998年にアウディが発売した初代TTというクルマはとてもエモーショナルなデザインでした。1990年ごろから世界のデザインの主流は完全に日本メーカーが握っていて、シボレー・コルベットC5や、ジャガーXJ220、フェラーリ360モデナなど明らかに日本のスポーツカーにインスパイアされたものが氾濫していました。そんな時代に現れたたった1台の小型スポーツモデルのデザインが、日本デザインの時代を終わらせたのですが、それが初代アウディTTです。


また失礼なコメントを頂戴した

  今日はデザインの話ではなくて、3代目になってTTがなぜ輝きを失いつつあるのか?でもなくて、先日他のブログで頂いた反論コメントに対する私なりの考察を述べたいと思います。何が問題だったかと申しますと、いつもの通り私が適切な説明をつけずに自説を強引に展開したからなんですが、ジャガーEペースという新型SUVが、フォードのC1プラットフォームにルーツを持つシャシーで作られたので、マツダの旧型シャシーがまだまだ現役で素晴らしい!!みたいなチープな感動と、それに付随してフォードC1とその前の世代のC170プラットフォームは、VWゴルフを叩き潰した伝説的なシャシーだったけど、そのルーツはマツダにあると書いたことから、見解の相違が発生したようです。


日本のスポーツカーとFF車が世界のサスを進化させた

  よくあることですが、日本のカーメディアが「タブー」にしていることに下手に首をつっこむと大抵は年配の読者の方から、反論コメントが来たりするんですよね。そして今日も別の「タブー」に頭をつっこむ予定です。C170プラットフォームは欧州フォードのみならず欧州生産のCセグが初めて使う近代的な4輪独立懸架(前ストラット、後ろマルチ)のシャシーです。このタイプのサスはバブル期の日本メーカーがDセグから次々と採用を始め、スバル、ホンダ、マツダなどでは80年代後半から90年代前半にかけてはシビック、ファミリア、インプレッサに採用されます。


ホンダがすごい理由

  イニシャルDという漫画の中で5代目シビック(EG)や6代目(EK)が登場しますが、なんでFFのシビックがあんなに走れるかというと、4〜6代目の「第2世代シビック」にはレースカーと同じ4輪ダブルウィッシュボーンが仕込まれているから。ホンダというメーカーは一部のスポーツカーを除き、1970年の四輪開業以降FF横置き一筋でクルマを作って来たレアなメーカーです。そんなホンダがFF車の限界性能を最大限に高める工夫としてサスペンション開発へ投資を行いました。


欧州のヒエラルキーをぶった切る

  1985年の三代目アコードを皮切りに1987年にプレリュード、シビックでも4輪ダブルウィッシュボーン化し次々に欧州に参戦し、かの地でも高い評価を受けます。1995年には英国ローバーとの協業によりEKシビックのシャシーを使った『ローバー400』が発売され大ヒットします。当時はまだまだBMW5シリーズが前ストラット&後セミトレで作られていた時代です。プジョー405、アルファ155など主だった欧州の中型(Dセグ)も同じようなサスを使う中で、メルセデスだけがマルチリンクを採用。BMW3シリーズも上級モデルよりも先の1990年にいち早くリアをマルチリンク化します。


欧州と日本の格差は歴然だった

  整理するとメルセデスとBMW3シリーズだけが後マルチリンク。他の中型(Dセグ)は後セミトレ。そして小型(Cセグ以下)は後トーションビーム。そんな時代にホンダ&ローバーと、他の日本メーカー車が続々と前後輪をDWBもしくはマルチリンクでアップデートして1990年頃から続々と参入します。ちなみにマツダは1990年ユーノスコスモが前DWB後マルチ、1995年のMS9が前後マルチです。


抹殺された欧州王者

  何が言いたいかというと、メルセデスやBMWが欧州において優位性を築いてきた設計上のヒエラルキーは、80年代後半から現れたハイスペックな日本車によって完全に破壊されました。ホンダに刺激を受けたプジョー、アルファロメオ、アウディが次々と4輪のDWB&マルチ化を進めます。この10年のカーメディアによって完全に抹殺されつつある歴史ですが、1999年頃の欧州アウトバーンにおいてコスパに優れつつも最高速260km/h以上での巡行を保証できたCセグ車は「シビックtypeR」だけであり、それと同時に全ての量産自動車の中で最速を誇っていたと記憶しています。


世紀末に苦しんだマツダ

  この頃(1999年)のマツダは極度の経営不振で、フォードに支援を仰いでの経営立て直しを断行した時期であり、在来モデルのアップデートこそしたものの、新型車種の導入は2002年まで凍結され不遇の時期を迎えます。もしマツダが健全経営だったならば欧州王者となったシビックtypeRに真っ向から対抗する激辛のスペシャル・ファミリアを作っていたと思われます。ちなみに『スピードファミリア』というモデルはすでに存在していました。


欧州を変えた3台

  1998年に「フォード・フォーカス」「アウディTT」「アルファロメオ156」が相次いで発売され欧州自動車産業がにわかに活気付きます。アルファ156はDセグの4ドアセダンで、BMW3シリーズ(E46)の牙城を突き崩すべくホンダの方法論を使って足回りをアップデートしたスポーツサルーンです。フォーカスはホンダ&ローバーを意識したハイスペックなシャシーによって欧州で大ブレークし見事にVWゴルフ4を叩き潰します。


絶対にカーメディアが触れない「タブー」

  そのゴルフ4をベースにしたアウディTTは低スペックなシャシーゆえに・・・横転事故が多発しリコール問題へと発展します。カーメディアは絶対に触れないけど、問題は空力だけでなくサスだ!!シビックtypeRよりもスポーティな見た目のTTですが、4輪DWBのシビックに対し、ゴルフ4の設計を引き継いだことから非公表ですが初代TTのリアはトーションビームだと思われます。260km/hで走れるDWBに対して、150km/hで接地感がなくなるトーションビームの性能差は、まあ要するにカローラやフィットを馬鹿にするドイツ車乗りが一番よくわかっているんじゃないですかね。アテンザとランクスという私のこだわりの2つの愛車を比べてもまあ歴然です。


トヨタの見解

この時期にカローラハッチバックを欧州へと展開させたトヨタは、最高速度が100km/hの日本にはトーションビームを、無制限の欧州ではDWBを使い分けます。この事実からも初代TTの横転の原因と、初代フォーカスの爆発的人気の理由は見えて来ます。ちなみに反論コメントをくれた人の見解によると、フォーカスの『C170プラットフォーム』は、エスコートが使っていた『CE14プラットフォーム』から発展したと主張されています。しかしトーションビームの『CE14』から、一気にマルチリンクの『C170』は飛躍しすぎじゃないか?と思うのです。それに対して私の考えは、同じ独立懸架を使う『BGプラットフォーム』をベースに、当時マツダが上級シャシーで愛用していたマルチリンクをCセグに採用するという画期的なアイディアをバブルの後期に温めていたのではないか?というものです。


どう考えてもVWゴルフを圧倒したのはMAZDAの技術だ!!

  1996年にフォードに支援を求めたマツダが、シビックtypeRを撃ち落とすために温めていた「秘蔵シャシー」を、支援の交換条件としてフォードに差し出したのではないか!?1998年にファミリアがFMCをしていますが、経営再建中のマツダは高コストが予想される「秘蔵シャシー」の投入を見合わせた。そしてZOOM-ZOOMとともに登場した新世代商品群「アクセラ」としてマルチリンク装備のCセグが誕生した・・・。もし『C170』がフォード単独開発だったならば、これとほぼ共通のスペックを持つ後継の『C1』はマツダの設計ではなく、フォードの設計とされるのではないか?そして1998年の時点においてMAZDAには既にマルチリンクの採用実績があったが、フォードにはまだないってこと。


さらにダメ押し!!

  そして1997~1998年ごろにMAZDAは新しいブランディングの柱として、「マツダはサスペンションで世界をリードする存在になる!!」という宣言を採択した。これは相当な自信の裏返しだと思う。メルセデスSクラスやレクサスLSよりも先にMS9やミレーニアには前後マルチリンクが採用されていた。なぜマツダがサスペンションで世界をリードできるのか?それは紛れもなく、1968年から脈々とスポーツカー専用設計を作り続けて来たことの福利だ。ロードスターやRX7は全世代で4輪DWBなのだから。ポルシェ、ジャガー、マツダ。半世紀にわたってスポーツカー専用設計を作り続けたメーカーは3つしかない。


カーメディアは解体するしかないか・・・

  くどくどと書いてしまったが、なぜかこのようなことを日本のカーメディアが書いているのを見たことがない。まさか専門家の連中が知らないはずはないのに。ホンダやMAZDAの名誉を説明することなしに、現代の自動車技術なんて説明不可能だと思うのだが。なぜ「タブー」にするのか? 日本人の悪い癖だけど「立場」に縛られているんだろうね。これまでのカーメディアがやらかして来たことを考えると今更書けない。欧州の原点はホンダとMAZDAでした!!なんて書いたら協会から破門される? だからこそ素人がブログで語ることは有意義だと思いますね。






posted by cardrivegogo at 04:06| Comment(0) | マツダの技術について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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