2017年06月06日

『燃費表示変更』に込められたマツダの深謀遠慮とは!?

  最近のマツダは新型モデルを出す時には、必ずと言っていいほど『何か』を仕掛けてきますね。定番なのは『ティザー』ですが、クルマを発売する前に『Gベクタリング』を宣伝したり、『レザーの材質』をアピールしたり、とにかく『プレ』に勝負をかけています。新機能なんて極秘に開発しておいて、未搭載の新型モデルの販売がちょっと不調だと判明してから、後出しジャンケンすればいいのに。

  そして今回はなんと・・・『燃費表示を変えてみました』。CX3に2Lガソリン車が出てくるタイミングで変える意味って何!? どう考えても2L自然吸気エンジンを積むコンパクトSUVでは、他社のライバルモデルに対して、モード燃費が伸びないですから、それを見越した『布石』以外の何物でも無いです。HVだと30km/Lを超えるモデルも珍しく無いですから、2Lガソリン自然吸気で出せるせいぜい15km/Lでは、確かに苦しいのは間違いないですけどね。

  しかし『Gベクタリング』や『ナッパレザー』といった高性能車に付いてくる『アクセサリー』に力を入れているマツダの流れからすると、ちょっとブレてる気がする・・・。たとえ前年と比べて販売台数は逓減しようとも、『Lパケ』や『XD』の比率が高まれば、売り上げ自体は伸びるでしょうし、利益率はさらに上がるわけです。アクア、フィットHV、カローラHV、ヴィッツHV、ノートe-POWERなどなど200万円以上するコンパクトカーが飛ぶように売れている日本市場で、238万円〜のCX3が売れないのは、世間で言われているように『価格』だけのせいではないです。

  マツダらしいクルマへと『鍛えること』はやや中途半端にしたままに、『価格のせい』『燃費のせい』で他へ責任転嫁しているようなメーカーには、追い風なんて吹かないですよ。15km/L程度のモード燃費でも『いいクルマ』は何の障害もなく売れていきます。例えば同じくらいの燃費だったフェアレディZの『Z33』と『Z34』は前者は成功して後者は失敗しましたけども、この2世代の明暗を日産は『燃費』だと解釈している節があります。『Z』が大好きな人々にとっては『燃費じゃねーよ!!』と思わずツッコミを入れたいところです。

  トヨタやホンダのHVが異常なモード燃費を叩き出す状況で、ある種のやりにくさを感じていたであろうマツダにとっては、より使用環境に合った実燃費をユーザーが気軽に算出できるような仕組みを整えることで、状況を打開する狙いがあるようです。マツダはトヨタのハイブリッドシステムを使っていますが、マツダが本気を出せばプリウスより優れたモード燃費を叩き出すのはたやすいそうです(ディーラーの人が言ってた!!)。ディーラーパーソン向けの講習会では50km/Lくらいまで余裕で実用化できるけど、トヨタとの協定で市販できないとの説明があったらしいです。

  マツダにとって耐え難いのは、トヨタやホンダと燃費競争を繰り広げた先には、何が待っているのか!?それをリアルに想像した時に、メーカー同士が消耗した挙句に、燃費のみにパラメータを極大化させたパッケージが、そのまま『ジェネリック』化して中国メーカーから日本へ大量に輸出される時代がやってくる!? そして日本の自動車生産設備(ラインと開発拠点)は、シャープのようにペロリと全て中国資本の傘下に収まる可能性が高いです。その第一段階はすでに始まっていて、ちょと前に世間を騒がせた、技術系ブランドとして世界をリードするはずの『三菱自動車のつまづき』でした。燃費競争の弊害はすでに現実のものになりつつあります(メーカーとユーザーは目を覚ませ!!)。とりあえず自主再建を諦めた三菱自を日産が買い取ったことで『中国資本へ渡る』という最悪のシナリオは回避されましたけど、代わりに日産傘下の最大のサプライヤーであるカルソニックカンセイが宙ぶらりんになっています・・・(これは喰われそうだ)。

  三菱のつまづきに、自らの未来を見てしまったのがマツダ・・・。『Gベクタリング』の導入も、三菱のテクニカル・スキームをよく研究して、三菱のAWD基幹技術である『AYC』に匹敵する看板を打ち立てた格好です。日本の某大手メーカーのように、開発部門よりも営業部門や購買部門が大活躍して花形になるなんて本末転倒なんですよ!!鋼材サプライヤーに車体を設計させて、エンジニアリング会社に駆動系の開発を丸投げし、素材・家電メーカーに各部の機能をバラバラに任せたセット商品・・・。これではグループ全体の売り上げは10兆円を超えていても、メーカー自体のGDP付加価値分は実質1兆円にも満たないです(実際に営業利益は10%に満たない程度)。

  スバルやマツダの利益率が高くなっているのは、巨大グループから外されて、生産車種を絞りつつも、少数精鋭のラインナップの基幹部分を自社で開発しているからだと言われています。スバルは開発部隊が花形!!マツダはデザイン部門が・・・(笑) 利益率は決して工場稼働率から単純に導き出されるものではないのです!!どれだけ自力でクルマを作っているか!?が数字に表れる時代。だから(アメリカから制裁を食らう前の)VWでもメルセデスの利益率には遠く及ばないのです。日本であれだけ売れていない三菱自の国内部門が、決して赤字にならないのも、自己開発の比率が非常に高いから!!

  もちろんモード燃費を伸ばすイノベーションに関しても、トヨタとホンダがトップシークレットで自社中枢において青天井の開発費を費やして行っているから、トヨタもホンダも利益率は決して悪くないです。スッカスカのボロカスになっているのがVWとフォードですかね。ほんの10年ほど前まで、マツダはフォード傘下の『トータル・エンジニアリング・ディベロッパー』として仕事を得ていた!!フォード本体は空っぽになるのも無理ないです。スバルも日産やGMの参加で同じような仕事を請け負っていましたっけ。そして三菱自動車&三菱重工は世界中の自動車メーカーと取引をしているという意味で『ボッシュ』みたいなものです。

  今回の『燃費表示変更』は、2つの見方ができそうです。1つ目はマツダが燃費競争の激しさにビビっていて、ユーザーのマインドを少しでも切り崩す材料にしたい!!というミクロ視点のもの。そして2つ目は、三菱やスバルとともにマツダが国内市場で行き詰まり、結果的に『日本の』自動車産業としての体裁を保てなくなりつつある・・・そんな危機的な日本の状況を好転させようというマクロ視点のもの。・・・もちろん肝心なのは行動を起こしたマツダが、今後どのようなモデルを市場に投下してくるのか!?この『表示変更』はもしかしてロータリー復活の布石なのか!?



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ラベル:マツダCX3
posted by cardrivegogo at 03:06| Comment(0) | マツダの戦略 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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