アクセラのシャシー(SKYAC)を使うCX5に対して、プリウスのシャシー(TNGA)を使うC-HR。どちらもブランドの看板を背負って立つ「アーキテクチャー」を使っていて、CX5の方が全長、全幅、全高ともにサイズは一回り上ですが、車格はほぼ同じといって良さそうです。あくまでスペック表から想像できる範囲ですが、いくつか比較してみると、新型CX5の最大のセールスポイントはメイングレードとなるXDのエンジンにナチュラル・サウンドスムーザー(バランスシャフト?)を組み込んで、マツダのフラッグシップSUVに相応しい「NVH対策」を施してきた点ですが、対するC-HRはプリウスと同じHVユニットを使っているので、こちらも静粛性に関してはアドバンテージがあります。
新型CX5は先代とサイズはほとんど変わらないのに、同じ2.2Lディーゼル同士で比べて、なんと100kgも重くなっています。おそらくマツダの2代目モデルの「定番改造」といえる、遮音材をたっぷり使って徹底的に静かにする!!を真面目に実行してきたことが伺えます。プロライターの試乗レビューでは「誰でも気づくレベルで静かになった!」とか書かれていますから間違いなさそうです。初代アテンザがカルト的なバカ売れを記録して、2代目アテンザにも同様の処置がされてましたねー。ミレーニア廃止でフラッグシップ化するので徹底的にやったそうです。・・・が2代目はリーマンショックに飲み込まれて未曾有の円高で売っても赤字の状態に陥りました。
シャシーが変わった3代目アテンザは、また遮音がリセットされていて「(2代目後期に比べれば)ちょっと騒々しいかも・・・」って思いましたが、MC後はだいぶ改善されました。「(先代が)売れれば静かになる」というマツダの法則。欧州流儀のクルマでアメリカに挑んだ新生マツダですが、CX9とは別にCX5が単体で年間10万台をクリアする水準まで成長しました。グローバルでもアクセラと並ぶ40万台の水準を確保したことで、製造原価計算における固定費償却分のコストがだいぶ下がったのかなーという気がします!!しかもトランプ氏の利上げ政策で年末に向けて、マツダ念願の1ドル=120円水準まで円安が進んでいます。不安要素としては北米で始まるディーゼル販売が軌道に乗るかどうか・・・。
たった1世代(4年半)でグローバル年間40万台へと成長した初代CX5(現行)はやっぱりスゴい!!発売から2年とちょっとでグローバル累計100万台を突破した初代アテンザは桁違いですけど、あの時代はフォード陣営の総攻勢でエンジンもミッションもフォードの工場でじゃんじゃん作られてジャガーやボルボにも同じものが使われてましたから、それを考えるとマツダの独力で0から40万台を生み出したのは素晴らしい!!まさに快挙です(アテンザやアクセラのシェアをいくらか喰ったかもしれないけど)。
日産のファンから見れば・・・、日産が初代エクストレイルから地道に「走り」のSUVを研究してきて、やっと2007年発売のデュアリス(欧州名キャッシュカイ)が欧州でスマッシュヒットして、欧州で日本車の新しいイメージ(スタイリッシュで走りも良いSUV)を確立しつつあるところで、マツダがそのノウハウを手際良くパクってホームランにしただけだろーってツッコまれそうですが・・・。3代目(GJ)アテンザのデザインも日産から拝借してしまったようですし。
CX5の歩みを再現するかのように、おそらく1世代での大飛躍を狙っているのがトヨタC-HRですね。国沢さんまで動員するなり振り構わないステルスマーケティング・・・、こんなこと指摘するのはちょっと野暮かもしれませんが、デザインは定評があるホンダ・ヴェゼルと日産ジュークからの「影響」が強く見られます(笑)。ヴェゼル、ジューク、CX3がいつの間にかアメリカ市場にもしっかりとラインナップされていて、各ブランドのボトムラインに厚みを加えていますが、トヨタも「コンパクト」で「ポリゴン」みたいな造形のSUVがラインナップに欲しくなったみたいです。新型CX5もグリル部分のやや過剰な突き出し感が、「新しいデザイン」へ刷新されたことを印象づける非常に重要な要素になっているようですが、それにしても一気に「ポリゴン」感が増しました。
マツダとトヨタによる、「コンセプトはパクリ&ポリゴンな外観」の新型SUV対決はどっちに軍配が挙がるのか!? CX5はグローバル40万台を死守できるのか!? トヨタもこの1台で、日本市場のヴェゼルを叩き落とし、欧州市場のキャッシュカイ(エクストレイル)と北米市場のローグ(エクストレイル)の30万台とCX5の10万台を「回収」する腹づもりなんでしょうね・・・。エクストレイルとCX5が活躍できたのは、トヨタがこれまで対抗モデルを投入せずに「泳がせて」きたからなのは間違いないですけど、もしトヨタが2012年段階で慌てて「北米カローラのクロスオーバー」などを作っていたら、それはC-HRとは似ても似つかないクルマになっていた可能性が高そうです。
エクストレイルもCX5もSUV離れした圧倒的な操縦性が海外市場で高く評価されています。これと互角に勝負するには「TNGA」を使う必要があったのだと思います。トヨタの汎用2.4L直4エンジンは経年のシロモノで、日産やマツダの内燃機関とガチンコで勝負するのはちょっと苦しい・・・。やっぱり日産やマツダのエンジンはすごく良くできてますよ。英国のレース用エンジンの大手サプライヤーであるアドヴァンスド・エンジン・リサーチ(AER)が大手メーカーから採用しているエンジンは、日産のSRとVQ、マツダのMZRだけだし・・・とりあえず基本性能が違う!!
トヨタは、EV性能を高めたプリウスのユニットが、モータートルクの恩恵でSUV向けにも非常に相性が良いことを商品力につなげようとしているようです。さらに欧州流のダウンサイジングターボで低速トルクを低コストで稼ぐこともやってます。ただし2016年の末に慌ただしく発売してくる辺りがちょっと如何わしい気もします。来年から排ガス規制が一層厳しくなり、現状の欧州車に使われる1.2/1.4L直噴ターボは2017年から型式認証が通らないらしいです。トヨタC-HRはなぜこのタイミングで発売なのか?(滑り込みセーフ狙い?) そしてターボ化を視野に入れていたスズキが新型スイフトの発売を延期したことも「排ガス規制」に絡むトラブルなんじゃないか?という気がします。どっかの雑誌が報じていた1.4Lターボのスイスポなんてね・・・。
トヨタは「HV」によるSUV観の確立を目指すのに対して、マツダは自慢の「ディーゼル」で強硬突破を図りますが、こちらも言うまでもなく低速「から」トルクが使えるSUV適正の高いユニットです。ダウンサイジングターボのような「誤魔化し」エンジンではないですけど、弱点が無いことも無いです。やはり「チョイ乗り」に対する懸念ですね。マツダもいろいろ対策を昂じていて、ノッキング対策にカスを自動的に燃やす行程が組み込まれていたりします。もっともチョイ乗りが良くないのはディーゼルに限った話ではなくて、ガソリンターボも状況はほぼ一緒です。日本の都市部でのチョイ乗りの使用状況を考えると、自然吸気のガソリンもしくはEVが無難かもしれません。CX5には「自然吸気ガソリン」がある!!っていうアピールもアリかも!!
ポルシェ・マカンターボみたいにV6ターボ(400ps)でドカンと走らせれば、そりゃ楽しいクルマになりますね!!官能的なSUVの出来上がりです。日産も35GT-R用のVRエンジンを使ったジュークRやキャッシュカイRを欧州で限定発売していました。500psはさすがに過激なので、新たに開発した3LのV6ターボ(400ps)でエクストレイルのハイスペック版も検討していると思います。対してマツダも2.5Lターボをハイチューンで350psくらいまで上げたらいい。
目一杯にハイチューンなユニットを積んだSUV同士で、日産のATTESA・E-TSの伝統を受け継ぐ「オールモード4×4-i」とマツダの気鋭の新開発「i-activeAWD」のどちらのトラクションコントロールがより優秀なのか?真剣勝負して決めたらいいさ!!他にも三菱、スバル、アウディ、ポルシェ、ホンダ(SH-AWD)が、挙って350ps級のSUVを発売して、ラリーでもすれば盛り上がると思うんだけどな。トヨタが「ザックス製サス」を前面に出してスポーツ性能を謳ってますけど、高性能SUVに関する技術力が全然違うんだ!!ってことがハッキリと示せるならばC-HRなんて怖くないと思いますけどね・・・ちなみにC-HRはターボのみがAWDだそうです(モーター式じゃなくて一応ドライブシャフト付きのフルタイムAWD)。
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