ちょっと説明が必要かもしれないですけど、リトラクタブルヘッドライトというわけでもないですが、ポルシェへの「愛情」をストレートに表現した初代RX-7(SA22C)の面影を強く感じます。いまではCピラーが目立つというだけで、ヒストリカルな印象が生まれてしまいます。日本で売られているセダンでピラーレスなんてもはや皆無ですし、ハードトップ車だとトヨタ86くらいしか思いつかないですが、ハッチバックスタイルなのであまりCピラーの存在感はないです。
そして「またポルシェか!?」・・・ポルシェ911に復活した「タルガトップ」を彷彿とさせるシルエットです。本家911の「タルガ」はマンネリ化しつつある911のスタイルに新風を吹き込んだ復刻ボデーですが、日本では「タルガ」は1600万円〜という価格設定でとても手が出ない(笑)です。マツダのデザイナーも「タルガ」の復活に感銘を受けたのかな?よーし!「プアマンズ・タルガ」で一発当ててやる!と狙ったかどうかはわかりませんが、この完成度なら先代に続いてRHTが大人気になりそうです(デザイナーも数年後にはアウディかジャガーにでも移籍!?)。しかしSA22Cのストーリーには続きがあって、ポルシェやフェラーリを射程に入れたRX7は、続くモデルチェンジで「FC3S」と「FD3S」更新され、いよいよポルシェやフェラーリを凌ぐ評価を獲得していきます。デザインの進化は今見ても目覚ましく、反則なエンジンを使っているので走りの水準も高く、まるで日産GT-Rが911ターボを撃ち落とすような勢いがありました。
そんなマツダの絶頂期80年代の序章を飾った「SA22C」。今見てもまさに「夜明け前」・・・期待で胸一杯の幸せな瞬間を感じるデザインじゃないですか? そして「MX-5RF」にもなんだか同じ運命の匂いを感じます。80年代のマツダデザイナーはこれからもっともっと会社が大きくなっていく勢いを感じていたでしょうし、今のマツダデザイナーは・・・マツダでいい仕事をすれば世界が見ていてくれる!そして世界に知られるデザイナーとして名を残すチャンスがやってくる!・・・そういう野心的な魅力が作品に現れているようです。
現行アテンザ(GJ型)のデザイナーの玉谷聡さんは、アテンザというクルマの存在意義に叶ったデザインという非常に高いハードルを自ら設定して手間ひまかけて仕上げたと言ってました。「マツダの全てを体現する」「このクルマが負けたら、マツダの負けだ」・・・そして「売れた!」わけですから、このクラスのクルマが欲しい顧客を掴むデザインをしっかり作れたわけです。アテンザのクラスは一部の市場でシェアを掴めないと負けです。事実世界中のメーカーから幾多のライバル車が発売されてそのほとんど全てが敗れ去りました(VW、プジョー、シトロエン、ルノー、ボルボ、アルファロメオ、オペルなどなど、赤字→撤退を繰り返してます)。
アテンザ以上に成功の見込みが薄いクルマ・・・それがロードスターです。アテンザ以上に顧客を捕まえられる非常に高いパッケージと訴求性の高い商品イメージが要求されます。そしてデザイナーの中山雅さんはそれに十分応えるだけの仕事をしたと思います(クルマを見る限りですが)。こんなに良質なデザインを次々と生むブランドはなかなか無いですよ!っと言い切ってしまいたいですが、ランドローバー、ジープ、テスラ、ボルボ、DS(シトロエン)、ルノーなど・・・いまいち業績が安定しない「綱渡り」なブランドでは傑作デザインが連発する傾向にあるようです(毎回毎回が社運を賭けた1台なんですね・・・)。
そんな中、ルノーの支援を受けての再出発が予定されているフランスのスポーツカーブランド「アルピーヌ」から、復活の第一弾となるであろうモデルの最終型に近いコンセプトとされる「アルピーヌ・ヴィジョン」がずっと気になって仕方ないです。以前(2月)にもこのブログで、「マツダのブランド・ドメインのど真ん中に位置しそうな1台」だと取り上げたのですが、なにやらこのクルマのデザインを手掛けるのはルノーからアルピーヌへ出向している元マツダの日本人デザイナーなんだとか。マツダ時代はRX7FD3Sのデザインにも携わっていて、その実績が評価されて今回のプロジェクトに抜擢されたと本人が語ってます。
マツダからルノーへというと、前任のデザイン本部長であるローレンス・ヴァン=デン=アッカーが有名ですが、2009年に移籍したヴァン=デン=アッカーよりもずっと前の2000年にルノーに移ったようです。デザイン・ディレクターはアントニー・ヴィランという人らしいのですが、この元マツダの日本人デザイナーは「エクステリア」の担当に抜擢されたんだとか!!!なるほど!!!なんだか90年代の日本のスポーツカーの雰囲気を感じる理由がわかった気がします。 参考までに動画リンクを貼っておきます「アルピーヌ・ヴィジョン」
あくまでアルピーヌA110のオマージュを意識した趣向なんでしょうが、この「4つ目」を見るとトヨタ・セリカを思い出します。ただしリアに回ると一気に欧州車らしい出で立ちになりこんどはジャガーFタイプクーペを連想させます。このデザインのルーツは日本なのか?イギリスなのか?なんとも国籍不明な感じが・・・少々デザインの弱さに繋がっている気がします。しかし周囲を威圧するようなオーソリティなデザインを要求しない軽快なスポーツGTですから、これくらい「かわいい」のがちょうどいいのかも。
90年代の初頭にマツダがブランド化を進めた「ユーノス」や「アンフィニ」のイメージ通り!?というかその時代をマツダで過ごしたデザイナーが手掛けているわけですから、当時のマツダの夢が詰まったこの2つのブランド・イメージが25年経って復活した?と考えてもよさそうです。ユーノスと言えば「NAロードスター」、アンフィニのイメージリーダーは「RX7FD3S」。世界中にフォロワーを生み出した魅惑のオリジナルと、フェラーリ越え!で欧州をも沈黙させた驚愕デザイン。これほど傑出した両車をブランド立ち上げ時に配してもなお「5ブランド化」に失敗したわけですから、根本的に戦略がどこか間違っていたんでしょう。それともクルマが良すぎたことが仇になったか・・・。
「日本の心を忘れて欧州に魅せられたマツダ」という揶揄は、この時からずっとマツダのトラウマになっているようで、例のフェルディナント・ヤマグチ氏の「マツダ本」でも藤原常務が「マツダの魂動は紛れもなく、日本のデザインです!(テメー殺すぞ!・・・どうせ腹の内ではマツダは欧州大好きバカだと、タカをくくってんだろ!デザインを見分けるセンスが無いヤツがマツダを語るのが一番腹が立つんだよ!!!)」とかなりムキになって主張してましたね・・・。
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