ニューモデルマガジンXの覆面の執筆陣は口々に「マツダは調子にのっている!お灸を据えてやる!」と連呼して怪気炎を上げています。他の雑誌のディーゼル車の比較企画では、幾多の欧州車はベタ褒めでの一方でマツダ車にだけ重箱の隅をつつくようなダメ出し(とりあえずマツダディーゼルが完全に他を圧倒しているのはさておき)を繰り広げています。まず静粛性に関して、マツダとメルセデス以外は高級車と呼べるシロモノではないのですけどね。ディーゼル分野で頭2つ分くらい抜け出したマツダに対して、出る杭は打たれるじゃないですけど、「マツダはドイツメーカーを追従してさえいればいい!そのポジションから一歩もはみ出すな!」というのがカーメディアの本音なんでしょうね。ドイツメーカーを抜かしてしまうといろいろ私たちの仕事がやりにくくなるからやめて!!!みたいな切実な叫びにも聞こえますけど・・・。
それにしてもカーメディアを通してマツダ車を見ると、なんだか凄く気持ちが悪いことが多くなりました・・・。まあマツダに限った話ではないですけども、特にマツダに対する評価を読んでいると、コイツら(ライター)は普段からクルマを使って休日を過ごしたりしてないのでは?と穿った見方をしてしまいます。マツダ車の良さは高い技術力だ!とかなんとか偉そうに言ってますけど、何に期待してオーナーはマツダを買うか?という根本のところが解っていないのでは?と思ってしまいます。エンジンの環境性能云々ではなく、マツダの魅力は新製品群においてもまだまだ、ハンドリングやペダルのレスポンスからヒシヒシと伝わってくるアナログ感が魅力です。単純に乗り心地だけで判断したら同クラスのトヨタ車に負けていると感じてしまうやや「荒い」足回りのフィール(固いというより荒いと言うべきだと思ってます!)も含めて、そのトータルがマツダ車がドイツでも人気になる幸福なエンターテイメント・ドライブを備えたブランドだからではないですかね?
それでもマツダはそれなりの価格の中型車を展開している「日本ブランド」ですから、BMWミニやメルセデスのFF系に比べれば乗り心地は圧倒的にいいです。とりあえずデミオはミニに全く負ける気はないようですし、アクセラはAクラスに「世界を制したCセグ設計!」として格の違い(FFキャリアの違い)を見せつけています(外見はほぼアクセラで中身はAクラスという謎のクルマが年内に発売されるとか・・・)。BMWやメルセデスのクルマ作りが世界に通用するのは一部のボディタイプに限られていて、やはり文化が違うSUVにしたってコンパクトカーと同様で、「ドイツ人にはセダンとGTカーしか作れない」というのは偏見かもしれないですが、どれもこれもアメリカで売れる水準になっていないです。どのモデルもこの手のクルマにはあってはならないことですが「弱い」です。押し出しが強いとかではなく、クルマ全体として存在理由がよく解らないという「弱さ」が気になって気になって仕方ないです。メルセデスの車名変更(M→GLE)などみても自信が全く感じられませんし、新型になろうとも一見して売れる予感が全くしません。
BMWに関してもSUVがイケてない!のは同じです。ランドローバーを一旦傘下に収めた上で、堂々とコピーして作られたBMW・X5はランドローバーに通じるSUV独特の美しさを放っていますが、その後に作られたX3、X1そしてX4が全くと言っていいほど「意味がわからない」です。このブランドにしては十分に価格も抑えられてはいますが、1〜4シリーズが使う低スペックなシャシーを使い回しているというだけで購入意欲は全く起こらないです。そしてそれ以上に気になるのですが、デザインがいい加減過ぎるのではないか?と見かける度に思います。予想通りに日本でもアメリカでもそれほど売れてはいないようですけど・・・。
日本では数年前からSUVをミニバンの替りにファミリーカーにしよう!という動きが活発になっていて、日本メーカーのSUVが1モデルで月5000台売れても全く驚かないくらいです。エクストレイル、ハリアー、ヴェゼル、CX5、CX3、ハスラーなどなど、どのメーカーもハズレを出すことなくこれだけ売れているのですから、デザインにさらにコストをかけているプレミアムブランドで、小型SUVも充実しているBMWやミニはさぞかしウハウハだろうと思いきや、メルセデスの独走に追いすがることすらできていません。
BMW・X3と同等の価格帯になるレクサスNXは好調な受注を記録しましたし、ポルシェのマカンはX3よりもさらに高価格ですが、とても年内に消化出来ないほどの大量のバックオーダーが舞い込んだようです。SUVを好む人々は、ブランドヒエラルキーを嫌っているという人も多いようです。フラッグシップ車なんてデカいし高い・・・考えるだけでバカバカしい!なんて考えてますから、ヒエラルキーを外れる手頃な価格のSUVがその需要を拾っているようです。カローラで十分なんだけど、クラウンが買えないと思われるのは癪だからハリアー買いました!みたいな・・・・。
その一方で人気のある高級SUVには着実にステータスが加わって新たなジャンルが形成されており、ほかでもない「高級SUV」そのものに憧れるセレブ嗜好のユーザーも増えているようです。そんな中でレクサスNXやポルシェ・マカンが好調で、前からあるBMW・X3が伸び悩んでいるというのは、そもそも「ブランド価値」という初歩的な判断において、BMWがレクサスやポルシェにすでに負けていることを意味するのではないか?と思います(クルマそのものの評価が低いという可能性も大いにあるわけですが・・・)。レクサスはいよいよ日本にもアメリカで販売している最上級SUV「LX」を導入しました。ベース車は「キング・オブ・SUV」の異名を持つトヨタのランクルシリーズです。
レクサスが日本で展開されるようになってから10年が経ちましたが、レクサス車を「中身はトヨタ・・・」と批判する人はだいぶ少なくなりました。そもそもプレミアムブランドの存在意義は、クルマそのものに大きなアドバンテージがあるわけでなく、主に販売される店舗のサービスにあります。金持ちはドンキホーテなどのディスカウントショップを嫌ってデパートへ出掛けますが、それと同じように一般ピーポーが溢れる大衆ブランドディーラーにはやってきません。彼ら相手の商売をするなら店構えや接客を改める必要があります。この10年でレクサスが掲げる意味がかなり浸透してきたと言えます。
しかしレクサスのようなプレミアムブランドの本来のビジネスモデルは、年収30万ドル(4000万円)以上稼ぐビジネスマンがゴロゴロ居るアメリカでは成立しますが、日本のように年収1000万円程度の中流がセレブ気分に浸っているような国では、その効果は極めて限定的なものでしかないです。その証拠になんで金持ちしか来ないはずのプレミアムブランドのディーラーで、やたらと「認定中古車」の販売が盛んなのでしょうか? 新車販売に関してもレクサスはまだしも、メルセデス・BMW・アウディでは最廉価車の本体価格はもはや200万円台の突入しています。スバルやマツダにクルマを見に行く層をなんとか呼び寄せようと必死です。マツダやスバルと競合する価格の輸入車プレミアムカーって一体中身はどんな粗末な造りなの?と怪訝に感じます。日本市場でまだまだ繰り広げられている偽セレブの「プレミアムごっこ」はそろそろいい加減に恥ずかしいので止めてほしいものです。
メルセデス、BMW、アウディのSUVがそれほど売れないのは、やはりブランド力の薄っぺらさがクルマに出ているからでは? 決してプレミアムブランドというわけではないですが、ジープの販売はアメリカでは絶好調で、その勢いは日本市場に投入される車種が増えていることとも無縁ではないようです。マカンが発売されてポルシェの日本販売台数は昨年比200%以上の伸びを見せていますが、ジープもそれを追って健闘しています。メルセデス・VW・BMW・アウディ・ミニ・ボルボの「6強」にジワジワと迫る7位ポルシェ(去年は15位)と8位ジープ(去年からすでに好調で8位)・・・。SUVが売れるポルシェとジープに対し、さっぱり売れないのがフォード、ルノー、プジョーといった面々です。SUVなんて新しいもの好き(ミーハー)が買うクルマですから、ブランドイメージはとってもとっても大事です。
マツダ「越」の量販モデルがどんなスペックで、どれくらいの価格帯で販売されるかわかりませんが、マツダは「全てを超越したクロスオーバーを目指す」と力強い声明を発表していますので、CX5のような300万円で買えるお手軽ファミリーカー向けSUVとは真逆の方向へ進んでいってくれそうです。CX5はSUVに関しては後発と思われていたマツダが「ビギナーズラック」の好影響からか、見事に金鉱脈を掘り当てて多くのユーザーを獲得しました! しかしCX5はこれまでのマツダ車がひたすらに拘ってきた、車体のバランスや安全にドライブするための運動性能の良さ(制動・ハンドリング)などがかなり犠牲になっているクルマだと思います。デザインこそ文句無しのマツダですが、中身は経済性の高いディーゼルが多く売れたという意味でもマツダの中のトヨタ寄りのクルマだと感じました。
スポーツカー・ブランド「マツダ」の面子よりもユーティリティを優先させたことで、トヨタ・日産・ホンダといった巨大メーカーを相手に、価格も含めて素晴らしい競争力を発揮しました。しかしそれを「是」としない、マツダらしさもどこかに残っていたようで、スポーツカー・ブランド「ポルシェ」に負けないような、まさにスポーツカー!と表現されるSUVを作り上げたいという情熱がマツダの公式発表には溢れています!(そう感じます)。「絶対的な運動性能」「走る歓び」そして「これまでのSUVの常識を越える!」これらのマツダが発信する形容に当てはまるクルマは、「カイエン」であり「マカン」です。厳密に言うと「カイエン」の高い重心を下げて運動性能の限界を上げたクルマこそが「マカン」で、フロントに収まるエンジンの重量を考えても「走りの質」は「マカン」でさらに上がりました・・・とりあえずそこいらの日本車SUVとは、「走り」へのこだわりが違うのは解りました。
実際に「マカン」の走りはCX5やCX3で追従できる生易しいものではなく、マツダのSUV造りの常識を根本的に変えないと足元にも及ばないでしょう。そんな現状をマツダ陣営もしっかりと認識した上で、アメリカの高級SUV市場に挑戦できるようなクルマを作ってやろう!という・・・なんともマツダらしい決意の元にプロジェクトが進行しているようです。とりあえず350psくらいまでは出せる「スカイアクティブGターボ」エンジンはすでに完成しているようで、スペック面で「マカン」とガチンコのクルマを作ることも可能です。
カーメディアは「マツダにそんな役割は求めていない!」みたいなことを言うでしょうが、彼らが支持するBMW/アウディ/メルセデスに多い「簡便な造り」のSUVはアメリカ市場で思うように販売が伸びずに苦戦しています。マツダがこれらの真似をして「CX4」なんてモデルを作ってしまったら・・・。そういう意味でも「越」コンセプトに付随しているマツダの強烈な宣言は、おそらくマカンへの宣戦布告!を意味していて、CX5、GJアテンザ、BMアクセラ、DJデミオ、CX3、NDロードスターと「小粒過ぎる」クルマがひたすらに続いていて、マツダの火は消えたのか!?と悲痛な思いを抱いていましたが、東京MSで公開される新型スポーツカー・コンセプトとともに、再びマツダの「やる気」が感じられるクルマが・・・まさかのSUVで発売されそうです。
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