年配の方からしてみたら「当たり前だろ!」って思われるでしょうが、この本に登場するいわゆる「カルトカー」は圧倒的にマツダ車が多いです!どうやら筆者のお気に入りメーカーもマツダ?のようで、最初の1台から「アンフィニMS-8」が登場してきます。内容は「なんでカルトカーなのかさっぱりわからん!めっちゃカッコいい!乗り味サイコ〜!」(なんか主旨変わってない?)とベタ褒めしています。・・・となると、それだけいいクルマがなんで売れないの?って率直に思いますが、筆者が仰るにはマツダの初歩的な戦略ミスだそうです。「アンフィニ」というブランド名ロゴが普通の日本人には読めない!という初歩的な問題だとハッキリ断じておられます。
2台目もマツダで「オートザム・キャロル」です!って2台連続かい!!!マツダってどんだけ「カルト」なんだ? 写真を見ると子どもの時にこんなクルマ走ってたっけ?・・・東京で35年育ってきたのでファミリア以外の車名は聞いたことがなかったですね。しかもファミリアはホンダ車だと高校生ぐらいまで思ってました。これぞカルトカー!東京育ちですから!なんて気取るつもりはさらさらないですけど、歴代カローラや歴代シビックはだいたい記憶にあるんですけどね。MS-8も見た事ないですし・・・。それにしてもこの4つ眼のフロントデザインは、なかなか(かなり!)イケてるじゃないですか! BMWミニやフィアット500みたいな可愛さがあります。小型車で安くてデザインも素晴らしいのに(またまた)なんで売れないの?
3台目はスバルの「ヴィヴィオTトップ」という小型オープン。今のスバルからはとても想像付かないくらいに個性的な設計(デザイン)でなんだかとても面白そうなクルマですが、残念ながらデザインが絶望的に酷い!これでは売れないですね・・・カルトカーになるのも止むなしです。あれ?なんかオカシイな・・・スバルのカルトカーとマツダのカルトカーを見る限り方向性は真逆です。ということはマツダ車をスバルブランドで売って、スバル車をマツダブランドで売れば上手くいったのでしょうか?
さて再び登場したマツダ車はいまでもマツダファンがしばしば復活を希望する「ユーノス500」。マツダ史上屈指の好デザインを誇る超絶「イケメン」セダンなんですが、イケメン過ぎてバブル崩壊後の退潮する雰囲気に飲まれての販売不振でカルトカーのリストに入ってしまったようです。これと同じようなパターンとしてトヨタ・ソアラ(3代目)が挙げられていて、バブルが終わって美麗過ぎるデザインはどこか胡散臭さが鼻に付いたりしたのかもしれません。カッコいいクルマ買ったら女性を乗せて食事にでも行かないと気が済まなくなるから出費がどんどん増える〜って感じで敬遠された? どんなにカッコいいクルマ作っても、バブル崩壊の景気後退局面では全く逆効果で地道にファミリーカーを作ったメーカーが勝ち組だったようです。
高価格のソアラは景気後退で露骨に売れなくなるのはわかりますが、ユーノス500はそれにくらべれば取るに足らないバーゲン価格なんですけどね。空前のFRスポーツカーブームだったので、FF車なんて見向きもされなかったんのかな・・・。本体価格が180万円〜ですから、マツダ車の5ナンバー車としてはちょっと高いと受け止められたのかもしれません。マークUのベースグレードが170万円ですから、売れるわけがない! それでもさすがだなと思うのは、マークUの古典的過ぎるデザインに対して、まだまだ現役で行けそうなユーノス500の鮮度抜群のデザイン。1995年に買って20年後の今でも十分に乗れるデザインですから、コスパの良さは相当ですね。そんなユーノス500の美点を引き継いだのがGGアテンザ(2002年)とGHアテンザ(2008年)だと思います。どちらも同時代のデザインと比べるまでもなく一目でオーラが違いますね!同時代のメル◯デス、B◯W、レ◯サスの酷いことといったら、アウディA4は認めますけど!
さてマツダ車以外に眼を移せば、「ディアマンテ・ワゴン」と「レガシィ・セダン」が出てきます。まあどちらも「じゃない方」ですね。ディアマンテは超美麗デザインで1990年に登場したセダンが日本COTYを獲っています。永島譲二のデザインでBMWの歴史でも屈指の好デザインとして絶賛されたBMW5シリーズ(E39系)がディアマンテのスタイリングのあらゆるところをパクるほどに秀逸なんですが、ワゴンの方はなんとオーストラリア生産の逆輸入車で間に合わせているようで、設計も豪州・米国向けのサイズです。これでは当然にディーラーは売りやすくて利幅も大きい(?)国内生産のセダンを買ってもらおうとするはずです。レガシィに関しても販売価格が高いのがワゴンの方ですし、ワゴンの存在を日本市場に植え付けた金字塔的なクルマですから、敢えてセダンという人は少数派でしょうからカルトカーなのは納得です。
この後もマツダ車は「ユーノスコスモ」「RX-7」「オートザムAZ-1」「オートザム・レビュー」「アンフィニMPV」と五台も続き、全32台中8台を数えます。トヨタ(4台)、日産(3台)、ホンダ(4台)の大手メーカーをも完全に上回っています(もちろん販売力があるから大手メーカーなんですけどね)。しかもトヨタは障害者向けの「カローラ・フレンドマティック」やホンダの珍車軽トラである「アクティ・クローラ」を含んだ数です(それはカルトカーとは言わないのでは?)。それに対してマツダは全部ガチで売る気満々のクルマばかり・・・下野さんは盲目的なほどに全部絶賛・・・。
まあ長年マツダが信念を持ってやり続けてきたことが、日本でも世界でも徐々に認められるようになってきてとても良かったと思います。アメリカでもイギリスでも「マツダはかっこいい」と絶賛され、下野さんもこの著書の中でRX7のデザインはフェラーリを越えた!と書いてますが、それが奇跡の一台に終わらずにブランド全体を貫くデザイン力になり、一体次はどんなカッコいいクルマを作るんだい?と期待されるドイツにもイタリアにもないブランドになりつつあります(アウディにもそこまで期待しないですよね)。しかもデミオもロードスターもCX3も全く期待外れではなかった!これは改めて凄いことです。パナメーラとかメルセデスSLSやGTとか理解し難いデザインの高級車を東京の真ん中でよく見かけますが、マツダがこういうクルマを今作ったらどうなるだろう?とふと思ったりします。
魂動デザインも発売から3年以上が経過しました。同時期に登場したレクサスの強烈なフロントデザインと比べても、マツダデザインの普遍性というべき高い能力が息づいているのがハッキリと証明されました。CX5ユーザーはレクサスNXの隣りにガンガン停めてあげればいいと思いますし、GJアテンザもレクサスLSの隣りに堂々と停めたいですね。「マツダにデザインやってもらえよ!」というコメントがあの提携のニュースに寄せられていて、マツダデザインが一般へも広く認知されつつあるのを感じます。下野さんの本を読んで、マツダの現在を思うと「ブランドのストーリー」が頭を駆け巡り、もう一台マツダ車買おうかな・・・なんて気持ちがうずうずしてきます。
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