普段から埼玉県西部の299号と140号線がクロスする秩父盆地周辺を「お気に入り」のドライブコースとしていましたが、その周辺でも最難関と思われる「三国峠」コースに挑みました。1年の約半分は終日閉鎖。しかも通行可能な夏期もAM8時〜PM5時までしか通行できず、三国峠側(長野県側)には施錠されるゲートが設置されています。地図上で見ても未舗装区間の総延長は20km足らずなので、時速30kmで走っても45分程度で走破できる一種の「アトラクション」です。しかしネットで情報を集めると、エクストレイルでパンクした!とかなかなかビビる情報も!走破経験者の車両は例外なく、フォレスターやランクルなどの本格派SUVばかり・・・。実は何度も計画しては何度も思いとどまっていて、「アテンザでは無理!?SUVを購入してから挑めば良い!」と考えていました。
なぜそんな所に行こうという気になったか? 自分でもよくわからないです(笑)。とにかくクルマが通れる道なのだから、なんとかなるだろう。JAFの会員なのだから最悪の時はお世話になろう。天気もどうやら大丈夫そうだ。くらいの気持ちで突き進んでいったのですが、もはやこれまで走ってきた林道とは全く景色が違います。小学校の遠足で行くような登山道に近いです。ルートを外れたか?と何度も思いましたが、ブラインドコーナーとなるところにはミラーが付いています。しかし路面は直径5〜10センチサイズの石ころが一面に広がってます。これ全部が過去の落石なのでしょうか?
自宅を4時半に出て、埼玉県の西端部・秩父市(旧中津川村)の登り口に着いたのが6時過ぎ。長野側のゲートが開くのが8時なので、ちょっと早いと思いつつも途中で景色でも眺めていれば時間が潰せるだろうとか思い登りはじめました。しかしすぐに道一面に広がる小石に怯えます。「ここは河原かよ」咄嗟に止めておいたほうがいい!エクストレイルでもパンクだぞ!という心の声が聞こえます。エクストレイルのオーナーはブログにご丁寧にタイヤを切り裂いた鋭利な岩の写真をアップしてくれていたので、そういう岩を見分けるために15km/h程度で徐行しながら進みます。「引き返す勇気?」「何も出来ない人の判断?」という相反するアドバイスが頭の中を反響します・・・。間違いなくこれほど危険と隣り合わせで運転したことないです。
ひっきりなしに揺すられ続ける車内は、昔に母親がパンクさせたときの乗り心地を思い出させます。もうとっくに4輪の内の一つがパンクしているのかも? しかし時たまに現れる橋の上を通ると、まだタイヤは無事だと解りホッとします。しかし油断は禁物で、常に眼の前の路面に細心の注意を払いつつ視線を上げると、眼前には隣接する山々の稜線がキレイに見渡せて、思わず停止。しかしそこから再始動するときに伝わる石ころ路面の頼りないグリップ感・・・。音楽を消し、窓を開けて外の音を聞きながら進むと、アテンザの前輪が必死に路面を手繰る様子が、ハンドリングやアクセルフィールだけでなく、ロードノイズからも感じられます。そして不意に前輪が沈み込むような段差に差し掛かった時に、このクルマの持つ本当の能力を確かに感じました。
かつての愛車だったカローラランクスや、鹿児島に1ヶ月滞在したときに借りたヴィッツで走ったときに、前輪が同じように沈むとサスペンションのスプリングが一気に底付きを見せ、ハンドルから殴られたような物理的なショックが生じましたが、アテンザのハイマウントなダブルウィッシュボーンは見事な減衰を見せ、全く不快(いや怪我するレベル)な底付き感は無かったです。そんな能力を隠していたのか?このクルマすげ〜!低床のスカイラインには真似できないでしょ!ついでにフロントがストラットなBMWやGJアテンザだと恐らくバキって行きますよ。下手するとフロントのインパネが壊れるかも・・・。
30分を過ぎてカーナビが残り半分を指す頃には、ずっと景色はいいし、アテンザの性能を新発見でき、なんともいい気分になってきました。途中にジムニーやハイラックス・ピックアップが停められていて自然を愛する人がチラホラ。しかしまだ開門時間ではないので、対向車は来ないですし、もし来てもまあ行き違いのスポットはかなりあるので何とかなりそうです。だんだん石ころ路面に慣れてきて30km/hくらいで走りそうになるのですが、油断したらすぐにパンクしそうなので、はやくゴールに辿り着きたいという気持ちを抑えます。残り4分の1に差し掛かったところで、デカい虫取り網を持ったオッサンが表れました。大学の研究者でしょうか?ちょっと離れたところにピックアップが反対向きで停められていて、まだ7時過ぎですがどうやらゲートは開いているようです(もともと閉められていない?)。
オッサンは不思議そうな表情でコチラを見ると、軽く会釈。セダンでここまで登ってくるヤツは初めてみたよ!みたいな顔付きでした。なんか悪い気がしなかったですね(笑)。エクストレイルは車重が嵩んで、車高も高くて、上屋がグラグラするからタイヤにも負担がかかります。しかしセダンなら地上高さえ確保できれば、エクストレイルと同じサイズのタイヤを履いているわけですし、むしろ有利なのかな?という気がします。フロントダブルウィッシュボーンなら、FFながらも十分に駆動できましたし、ストラットよりも幅広い接地面を持つ特性は通常走行よりもこうした悪路走行時に効果を発揮するように思います(壊れたら修理が面倒というデメリットもありますが)。
ほぼ予定通りの7時半頃にゲート&三国峠に到着。天気も良くて見晴らしも素晴らしかったです。さて下界が混雑する前の午前中には自宅に帰りたい!ルートはこのまま長野県川上村まで下ったあとに、山梨県側に出て中央高速を使うか?それとも群馬県側に北上し299号線へ戻るか? 川上村から山梨へ抜ける直線ルートは、日本の車道の最高地点・大馳峠を超える道です。もはや三国峠までで精力を使い果たしたのに、さらに未踏の高地ルートに挑む元気はなく、さらに人気の登山ルートへの入口なので、混雑も予想され楽しく走れないだろうという判断から、北上することにしました。こちらは初見参になる馬越峠を通り、箱根を思わせる高低差のある中速ワインディングをぼんやりした頭で楽しみます。
南相期木村・北相木村を通り、県道124号の峠越えで群馬県上野へ戻るルートを走り、長野〜群馬の県境を越えて下りに差し掛かったあたりで、後方から不意にエンジン音が響きます。まさか峠ルートで自分の後ろに付くクルマが現れるとは・・・。これまでもロードスターやS2000など数々のスポーツカーに道を譲らせてきて、一度たりとも後ろにクルマが張り付いたことが無かったので、只者ではないなと警戒しつつミラーをよく見ると?何だこのクルマは?34のZか?いやいやエンジン音は日産のV6よりも数段に獰猛です。え?もしかしてV8ヴァンテージ? 疲れを感じていた頃合いだったので、すぐにハザードを焚き道を譲りました。グラサンの紳士が一人で猟るV8ヴァンテージ。こんな深い山間で走るクルマだったっけ?相変わらずボケっとした頭で横をクラクションを一つ成らしてすり抜けていく、紛れもないアストンマーティン車を見つめます。
そういえば日本の山岳路では、輸入車には絶対に負けない!みたいなことブログで書いてたっけ、洗練された英国スポーツカーのリアデザインは美しいです。現行モデルになってやっと洗練されたリアを持つようになった911/ボクスター/ケイマンなんかよりも数段にクールだ。綺麗なものを眺めたいという衝動に駆られて追尾を開始・・・一旦は見えなくなったリアをなんとか視界に収めます。しかし相手のドライバーもスイッチが入ったようで、さらに強引にペースを上げたようで、追従するには相当な集中力が・・・。低速コーナーながらも少々直線が長めにとられている124号線で、400ps超のV8しかもドライバーは相当な腕前(じゃなきゃ2000万円近いクルマでこんなとこ走らない)。立ち上がりでぐいっと話され、ブレーキングでいくらか詰められるけども、こちらよりも10cm以上短いホイールベースの恩恵でコーナーを想像よりも断然に機敏にクリアしていきます。
元気だったら、ケツにぴったり食い付けた・・・なんて言い訳はしません。アストンマーティン・V8ヴァンテージの走りに、日本の峠コースをも余裕でこなすだけのポテンシャルを秘めた凄いクルマの矜持を感じました。ドリキンが超絶チューンしたRX7やS2000を走らせれば勝てるのかもしれないですが、1640kg(意外と軽い)のボディがあれほど優雅にコーナーをクリアするのか・・・とため息が出ました。クルマの価格を考えれば相手は5倍以上するわけで、圧倒的な実力差があっても仕方ないですが、いや〜E63AMG4MATICの時もそうでしたけど、実力見せつけられて欲しくなってしまうパターンですね・・・。
なんとも不思議な1日でした。アテンザにエクストレイルを超える悪路走破性を見出した1時間後に、得意の峠道で、これまでバカにしてきた輸入車に完全にぶっちぎられました。赤城レッドサンズの高橋兄弟(RX7)に実力の違いを見せつけられた秋名スピードスターズの池谷先輩(S13シルビア)の気分でしたね・・・「アイツら何というか次元が違う」。まあこれに懲りずにアテンザで峠道を走り込んで再びV8ヴァンテージに挑みたいと思います。(マツダさん!V8ヴァンテージに勝てるクルマを作ってください!)
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