MAZDA CAPELLA「広くて装備も充実しているが魅力なし。」有力なタクシー候補がまた1台。モデルチェンジによってノーズとテールが幾分シャープになり、内容もより充実したが、魅力が高まったとはいい難い。〜中略〜 エンジンはそこそこのレベルにあるが、スポーティというには程遠い。
BMW 3-SIRIES「技術力の深みを見せつけられる、BMWの代表作。」BMWの屋台骨を背負うモデル、3シリーズは、世代ごとに大きな進化を遂げてきた。先代モデルのE36に比べると荒削りな部分が消え、往年のドリフトマシンの面影はもはや残っていない。これぞスタイリングの勝利というべき美しい仕上がり。 (引用ここまで)
この時点が3シリーズやアテンザが属する「Dセグスポーツセダン」にとっての「最も華のある時期」だったといっていいかもしれません。他にもアルファ156、トヨタアルテッツァ、ホンダアコード、スカイラインGT-Rの4台がこの同じイギリスメディアによって絶賛されています。さらにスバルレガシィB4、サーブ9-3、ローバー75、プジョー406といった多士済々な顔ぶれがそれぞれにシャシー性能やらスタイリングやらで評価される一方で、マツダカペラ、オペルベクトラ、ルノーラグーナの3台にはイギリスメディアからお叱りの苛烈な評価が付けられてしまっています。恐るべきイギリスメディアというべきか、ベクトラとラグーナのフェードアウトを見事に予想しています。よってカペラへの評価も妥当なところだと思われます。
1999年当時の「Dセグセダン」ヒエラルキーの頂点がE46の3シリーズで、底辺がGFカペラ・・・。これはマツダファンにとっては屈辱以外の何者でもない現実です。クロノスの失敗の一因もこの辺の実力不足にあったのかもしれません。それなら自分で試してみよう!と実際にGFカペラに乗ってみたところ・・・意外に?というかそれなりに新鮮でこれはこれでいいかも?と思わないこともないですけど、やはりコーナーをいくつか抜けていく中で、今のマツダ車ではコンスタントに感じることができる、手足への絶妙で上質なフィールを作り込むところが決定的に抜け落ちていることに気がつきます。それでもマツダファンの意地というわけではないですが、実家のプレミオのCVTで全てが終了してしまっている乗り味よりは好感が持てましたけどね。あとはインテリアの質感の問題かなという気がします・・・。
その後に、GFカペラからGGアテンザへと全てを一新して「創発」ともいうべき、劇的イノベーションが行われました。酷評されたカペラの後継車とは思えない驚異的な躍進を遂げて、タイトルにもあるようにドイツではクラスシェア10%を獲得するまでになりました。もちろんこの成功には様々な伏線があったことは容易に想像ができます。当時ジャガーやアストンマーティンといった英国の名門ブランドを束ねて、ドイツメーカーへ宣戦布告していた「連合国」フォードの先陣を切って、2000年にフォードモンデオ(2代目)とジャガーXタイプが登場していました。この2台には新たにマツダが開発したMZRエンジンが搭載され、欧州Dセグで非ドイツ車が見事に輝くという快挙を達成しました。さらにフォードグループが続いて放つ「スポーツセダン」としてマツダの"超絶"新型プラットフォームとともにカペラ後継車「アテンザ」が追加されました。「差別化」「ブランディング」を絶対視するフォードの「キラキラ」マーケティングに沿うべく、新生マツダからは、「新型ロータリスポーツ」と「世界最良のDセグスポーツセダン」が用意されたと、複数の文献から確認ができます。
初代アテンザ(GG)の担当開発主査は金井誠太さんという方で、クラス世界最高レベルの「ハンドリング」と「ブレーキング」を絶対命題に掲げて開発が行われたそうです。金井主査の頭の中はユーザーが100%満足なスパルタン究極仕様しかなかったようで、当時Dセグの頂点とされていたE46(3シリーズ)の性能を上回るクルマを、アベンシス(トヨタ)に対抗出来る価格で売る!という理念をそのまま具現化した素晴らしい仕事です(GT-Rの水野さんのようですね)。しかし残念ながらアテンザデビュー当時の日本のテレビCMからは、そんな「究極仕上げ」なニュアンスはまったくといっていいほど伝わってこなかったです。2002年といえば、スカイラインGT-R、スープラ、RX-7、シルビアが一辺に消えた年で、世相は「頭文字D」が映し出すような「ドリフト天国」。FFセダンなんてほとんど見向きもされない時代だったように記憶しています。バブル期に登場したP10プリメーラはあんなにも美しかったのに、いつの間にやらダサダサなデザインへと朽ち果てるなど、作っている側にもにもFFでクルマ文化を切り開くなんて気概はさらさら無かったようです・・・。しかし日本のFFスポーティセダンやインテグラやセリカのようなFFスペシャリティは、驚くほどに当時の海外メディアでは好意的に受け入れられていたりします。
その辺の「日本と欧州」の温度差が、アテンザにもそのまま当てはまるようで、欧州を驚愕させたマツダの新型スポーツセダンは、日本では無名orマイナーの域を出ませんでした。ご存知のようにGGアテンザは欧州で大ヒットを記録し、世界各地で150くらいの賞を獲得したわけですが、製品企画はいかにもマツダらしい「マッシュ・アップ」手法でした。この設計方法がそもそも日本的な美意識とは乖離しているのではという気がしなくもないです。簡単にいうと合理的にクルマの性能を作り上げる手法で、当時評価が高かったクルマの良い部分だけを集めるものです。初代プリメーラのような強固なシャシーに、欧州で好評のアコードやアルテッツァが使う重厚感あるサスペンション(4輪ダブルウィッシュボーン)に準じたもとを採用し、後輪サスにはマツダが意気込んで開発したのに成果が出なかった「マルチリンク」を復活採用しました。そして量産型4気筒エンジンとしては世界最高のクオリティを誇ったMZRエンジンが載るわけですから、まあいいクルマができるのは誰にでも想像できすし、「高級素材」の良さをそのまま生かす設計で、これだけ揃えればE46を撃ち落とすことも難しくないかなという気がします。
さて当時の頂点といわれるE46も試してみました。といっても比較的新しい2004年モデルでしたが、すでに10年経過モデルだからでしょうか、ミッションの段付き感が気になってあまり楽しめませんでした。やはり欧州車は本国で主流のMTで乗るべきなんでしょうか? 現行のF30と比べるのは非常に難しいのですけど、自然吸気エンジンはやはりペダルを通じてエンジンと感覚がシンクロしてくる感じが好印象です。ワインデングを気ままに走らせるならE46で、長距離でどっかに行くならF30という選択になるのは間違いないですね。やや極点な意見ですが、実用面でE46はロードバイクかロードサイクル的な用途で、F30は東海道新幹線に代替できる存在といえるかもしれません。
3シリーズはこのE46からF30までの変容の中で間にE90という過渡期のモデルがあります。実はこのE90の時に日本市場で10%を獲得します。E46のベースをそのまま使いつつも車重が100kg以上増えたので、なんとも重苦し印象のクルマになりました。ちょうどE46のカブリオレが福野礼一郎氏に「裸の王様」だと酷評されていましたが、このE90の印象もやはりそんな感じの乗り味だと感じました。このクルマが売れまくった2006年当時から8年経ったあとでの印象なのでE90にとってもなにかと不都合な点はあるでしょうけど、E46よりも確実に味が薄いです。ランフラット装着のせいか、ボデイ拡大&重量増のせいか、あるいはその両方のせいか、グリップ感に乏しく、まるでトヨタ車(マークX)に乗っているような手応えです。これが日本でバカ売れした理由は、BMWが仕掛けた残クレ戦略以外に一体何があるのか? 「BMWのブランド」と「一応マークXくらいの性能は確保」の2点があれば十分に商品性があるのかもしれないですけど・・・。
ちなみにBMWの名誉のために言っておくと、当時のCクラス(W204)はEクラスのシャシーを使っていたために、E90以上に車重が肥大化していてもっと酷い有様でした。E90もW204も悪くはないけどイマイチ・・・そんなこともあってかドイツ国内で「和田デザイン」のアウディが大躍進したのもちょうどこの頃でしたね。FF車ながらE46をも凌ぐ超絶ハンドリング性能を発揮していたアルファ156は、159になってEセグの166用シャシーを使うようになり、こちらも200kg以上の車重増に折り合いがつかずにあっという間にに沈没しました。そういった中で「過渡期」という難しい状況を無難なクルマで乗り切ったBMWの販売戦略は素晴らしいものがあります。
アテンザに関してもDセグセダン全体が「過渡期」に差し掛かった時期にモデルチェンジを迎えたGHアテンザで、電動アシストステアリングへの変更など、評価の分かれる点を含んだモデルチェンジを敢行しました。欧州ではE90、アルファ159の不振と、リーマンショックによる影響もあって中型車人気が一気の冷え込んだようです。マツダとしてはフォードに採用されていたGG-GH型プラットフォーム(フォードCD3)が、2007年からボルボが開発したC1(アクセラが使っていたもの)を改良したEUCDへとフォードの本流が移るなかで、新型プラットフォーム(スカイアクティブ)に向けた実験の場としてGHアテンザを位置づけていたようです。ちなみにBMWもE90を最期にL2プラットフォームが廃止され、F30から新型L7が採用されることが決まっていたので、E90の仕様変更は目まぐるしく行われました。三菱が2005年に量販車に投入した直噴ターボ技術にいち早く目を付けて搭載したり、335iクーペの後期モデルでは7速DCTを組み込むなど、「次世代GTツアラー」の理想型を目指した試行があれこれとされたようです。
さて2012年に相次いでF30とGJアテンザに変わり、サイズは大きくなっているのですが、中身はややこじんまりしてきました。どちらも新しいプラットフォームになってから、従来この両ブランドに期待されていたスポーティな性能は影を潜め、実用性・経済性とブランド力だけで商品力を決定付けるようなクルマ作りが少々鼻につきます。まあどちらも東京〜大阪間くらいをシャトル運用する分には非常に魅力的ではあるのですけど・・・。世界的にC・Dセグを横断するプラットフォームが当たり前になっていて、アテンザはアクセラの、3シリーズは1シリーズのそれぞれストレッチ版と言ってしまえばそれまでの存在になってしまいました。E46のかつての輝きはどうやらM235iへと受け継がれたようですが、果たしてマツダにはGGアテンザと金井主査の思いを引き継ぐようなニューモデルを期待できるのでしょうか?
リンク
「最新投稿まとめブログ」
↓引用元はこちらです。
少しマツダに対しての辛口のコメントが続きましたが、マツダには、ぜひGG及びGHアテンザのような、これまでのマツダファンを納得させるような名車をつくって欲しく思います。
マツダは、「日経新聞」によると、確か2018年3月までに完全黒字化を計画(予定)していたと思います。ですから、それに向けて多くの宣伝費やDセグメント車におけるやや割高な強気の価格設定をしているのかもしれません。この前述べたように、アメリカでの販売にも力を入れ、幸い現在の販売状況は好調のようですので、それはそれで喜ぶべきことなのでしょうが。
ただ、スバル(富士重工)がレガシィの大型化に伴い、これまでの熱いスバルファン(いわゆるスバリスト)
を納得させるために、国内限定のレボーグを発売したように、できればマツダもこれのでのマツダファンを納得させるような「価値ある」マツダ車の発売に踏みきって欲しく思います。
前社長(名前が出てきませんが)は、数年前のロシアモーターショー開催の時期あたりで、マツダのような規模の自動車メーカーにおいて、4,800o以上の長さの車はつくらないと明言していましたが、センティアなきあとカペラの後継車であるアテンザが、かつてのカペラとセンティアの両方の部所を兼ね備えたマツダの「フラッグシップカー」の位置にいることが、いろいろな点で無理をしている(矛盾が露呈している)根本原因だと思っています。
センティア的視点に立てば、世界のプレミアムカーに近づくため装備を充実させ、それなりの値段にしなければならない。カペラ的視点に立てば、あまりにも値段が一挙に高くなりすぎている。
これまでに読んだカー雑誌によると、トヨタ・クラウンやスバルレガシィは、FMCの際、ほぼ前モデルより、17万円ほど値上がりしています。また、これまでの実績を見ているとMCの際にもそんなに値段を上げていません。ほぼ妥当な金額に落ち着いています。
しかし、マツダのアテンザの場合は、勝負を賭け、一挙に車格をあげてしまいました(全幅ではクラウンよりも40oも広くなっています)。それだけならよいのですが、同時に値段も大きく高騰したので、従来からのマツダファンである一人としては、大きく首を傾げているわけです。
前回のCARDRIVEGOGOさんのコメントや今回のブログの記事を読んで、改めて元マツダ社員の立花啓毅(たちばな・ひろたか)氏の『なぜ、日本車は愛されないのか』(株式会社ネコ・パブリッシング、2014・4・14初版第1刷発行)を読み返してみました。そして、以下の箇所が強く心に残りました。
数学者の藤原正彦教授(お茶の水女子大教授・作家の新田次郎氏のご子息)の「資質を高めるには豊富な知識・集中力・持続力・論理的思考力・情緒力という五つの力が必要で基本はやはり情緒なのです。情緒というのは喜怒哀楽や好き嫌いの感情でものをいう原始的な情緒ではなく、美しいものに対する感受性であり、感動する心であり、また人の心の痛みや、ものの哀れを感じる心です」の言葉を引用した後、「情緒とは生と死、そして愛する人との関わりの中で生まれ、その情緒が人生のすべてを決めると言えそうである(前掲書219頁)」と述べた言葉。
「日本が世界から尊敬されるには、我々の心の奥にある『情緒』を我々自身が再認識することから始まるように思う。この情緒によってモノ作りを変革することができれば、世界に向けて新たなムーブメントが起こせ、世界の潮流になり得ると思う」(あとがき275頁)という言葉。
マツダは数字ばかり追いかけるのではなく、マツダはスポーツ(ティ)カーであるという原点に立ち返って価値あるクルマ(値段のわりに性能・装備が充実しているクルマ)をこれから作っていってほしく思います。また、私のような古くからのマツダファンの心の痛みも少しは忖度(推察&理解)してほしく思います。
先日、ワイルドスピード7・SKY-MISSIONを見に行った際のトム・クルーズ主演の映画予告編で、必死にBMWのサイドブレーキを引いて(たぶん180度ターンを試みている)画面が瞬間的に流れていました。そのとき、アニメ頭文字Dで猪谷先輩がシルビア(シルエィテイの姉妹車)でサイドブレーキを引いている姿が想い出されました。すでにアテンザが電磁ブレーキになった今、アクセラ、デミオにまでサイドブレーキを廃止してほしくありません(でも、アクセラあたりは電磁ブレーキになるでしょう)。さすがに、スバルは、S4は電磁ブレーキにしたものの、STIはサイドブレーキのままです(マツダもロードスターはサイドブレーキですが)。
以上、思ったことを述べて見ました(同じような内容の繰り返しですが)。終わります。
申し訳ありません。本の発刊日の年が間違っていました。
2014年ではなく2003年でした。よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
レヴォーグは欧州への輸出を始めたようですね。
車格はゴルフヴァリアントやプジョ308SWと同じ、
Cセグワゴンなんですが、3シリーズワゴンに匹敵するくらいの、
程よい重厚感のある走りが魅力なんだそうです。
乗ってみた感じでは、レヴォーグよりもアテンザワゴンXDの方が、
絶対的に「いいクルマ」かなとは思いました。
もちろん300ps出す2Lターボモデルと比較すれば、
あれこれややこしいところはありますが、
今のマツダで一番説得力があるクルマはアテンザワゴンXDじゃないかと思っています。
マツダも年内にCX9を発売して、アテンザクロスオーバーとして、
レガシィアウトバックとガチンコ対決になりますね。
やはりGJ後期アテンザと同じように、スバルを意識したリアシートヒーター(広島では不要?)を設定して対抗するんでしょう。
アテンザセダンとレガシィB4も「XD&AWD」と「ボクサー&AWD」で何かとマツダが米国で成功したスバルを意識しているようです。
レヴォーグにはリアシートヒーター無いけど、アテンザワゴンにはあるので、マツダが優位なんですが、せっかくのAWD追加も寒冷地では軽油の凍結が嫌われてディーゼルは敬遠されるようです。
そこでスバルに対抗して2.5Lガソリンターボ投入!って流れなのかな? なかなか面白いライバル関係だと思います