そしてその場はやや前向きになって、参考までにと見積もり&カタログを貰ってきてしまうので、部屋がなかなか片付かなくなってしまったりするのですが、やはり家まで見積もりを持って帰ってみると、「なんでアノ程度のクルマで480万円もするのぉ?」ってことになります。新車に「割高感」を過剰に感じるならば、黙って中古車屋に行けばよいのでしょうけど、中古車というのはどうも気が進まないんですよね(潔癖性以外にもいろいろと懸案がありまして・・・)。ということで買うならやっぱり新車!なんですが、これを買って長く乗って、中古車以上にコスパを稼ぐとしたら、まずは「絶対にハズレを買わない」ことなので、家で冷静になってみると恐ろしく厳しい査定をし始めます。結局のところこの「査定」をクリアしたのはほんのわずかで、その中の1台が見積もりで400万円を越えているにも関わらず「アテンザ25S」だったりします。でもあまり乗り気ではないです。
マツダ車ですらこんな感想を持つくらいですから、他のディーラーに行ったところで、全く芳しい成果など無いことはある程度は予想できるのですが、それでも「おや?これは!」と決して小さくない発見があったりします。自動車技術において現在ではかなり幅広い領域で「相対的優位」を見せるマツダですが、それでも他のメーカーと乗り比べると、まだまだ改良の余地はたくさんあることをまざまざと見せつけられます(決して私が作っているわけではないですが・・・)。もちろん「走り」と「乗り味」に関する部分であって、トヨタ車やホンダ車に乗ってそのパッケージの良さに驚いたって話ではないです。クルマ雑誌がスポーツカーの収納スペースの広さをわざわざ比較して点数化してたりしますけど、スポーツカーの評価にそんな純度の低いものを混ぜられても困りますよね。
マツダが「走り」に関する点で負けてしまうなんてことがあるの? しかもそれがエンジンパワーに依るものでないとするならば、これは声を大にしてメーカーに発信してあげたいです。まずあまりの実力差に「これは!」と感じたのが、「レクサスIS350Fスポ」のシート取り付けの剛性の高さです。日常的にGHアテンザで走る近所のワインディング・コースをほぼ同じ速度で駆け抜けましたが、「やべ〜」完全に(アテンザが)負けてます・・・。同じコースをGJアテンザワゴン(XD)のパワーシートが仕込まれたモデルでも走りましたが、それでも完全にレクサスが優位でした。というよりGH→GJになっての進化はこの部分にはないのかも? いや〜お見事ですね、マツダの得意なコースでマツダ車を部分的とはいえ負かすのは素晴らしいことです。レクサスISを試乗するならもっとも良さを感じるのがワインディングですね(ちょっと重いですけど・・・)。
初代からアテンザがベンチマークだと公言している、「BMW320i」もまたマツダを超えた「良さ」があります。ちなみに福野さんが言ってるようなミッションの話ではないです(福野語録:デミオの6ATに感動して「もう少しで8HP(BMWが使うZFのAT)になれるぞ!」だそうです・・・)。個人的にはミッションはマツダが勝っていると思います。8HPは燃費ばかりに意識がいってしまって楽しくない!ですから。さてBMWについてですが、ハンドリングやロール剛性といった点ではすでにマツダが上回ってしまっている感すらあります。ただしBMWには「Mスポ」という不思議なオプションがあって、これを使えばマツダみたいなフラットな乗り味になります。「ノーマル」だと足は「ふにゃふにゃ」なクラウンの乗り味で、「Mスポ」だとスカイラインやアテンザの乗り味になる仕組みです。さて余計な前置きを挟んでしまいましたが、マツダがBMWにまだまだ勝てていない部分とは、直線での加速時に機械全体がスムーズに動いている「ストレスフリー」なフィーリングです。直進安定性の仕上げのやり方だとは思いますが、これはBMWに試乗して容赦なくアクセルを踏んでみたときに感じます。「これはなかなかだな・・・」。マツダとは違って縦置きエンジンなのでそこからフィールが違うのですが、同じ縦置きのスカイラインやレクサスISと比べてもBMWが優れているのがわかります。マツダもZOOM=ZOOM言ってた頃は、だいぶこの点に配慮した開発を進めていたようなので、実際に高い水準にはあると思いますが、やはりFFという設計の限界に近いのかも?
ことごとくFRの同クラスに部分的に出し抜かれているアテンザですが、このレクサスとBMWが持っている美点を備えることができれば、いよいよこのクラスの絶対的な存在になれると思います。実際のところそれ以外の部分ではISや3シリーズを上回っていますし、さらに「コスパ」ということを考えれば、アテンザはレクサスやBMWにとってもっともやっかいなモデルなはずです(目の上のたんこぶ)。けれどもISや3シリーズに備わる美点はわかるのですが、やはりブランド内での下位なモデルという立ち位置をまざまざと見せつけられる点も少なくありません。ハッキリ言ってしまうと、どちらもアテンザより良いクルマとは思いません。
マツダがさらにGJアテンザに磨きをかけるとするならば、ISや3シリーズをいくら追いかけてもいま挙げた点以上のものは得られないと思います。言うまでもないですが、さらなる「想像力」を発揮して、ラージセダンとしての商品力を高める必要があります。これは私の思い込みかもしれないですが、マツダは目指すべきターゲットがハッキリしている状況ではとても優秀なクルマを仕上げる能力を発揮しますが、独自に価値観を生み出して「オンリーワン」な存在になるのはあまり上手ではないように思います(ロータリーを実用化したからオンリーワンという見方もあるかもしれないですが・・・)。今後は目標もないままにアテンザは一体どこへ向かうか?ふとエアポケットに入ってしまったような喪失感から、「マツダこそが至高!」だと胸を張ってこれまで以上の前進ができるのか?1人のファンとして期待と不安が入り交じった気分です。
アテンザは、ISや3シリーズのようなブランドの入門車ではなく、アクセラを選んだ目の肥えたユーザーから「羨望」のまなざしを受ける存在でなくてはいけません。そしてそれと同時に、アクセラは最初から選ばない、クオリティカー志向の人々からも十分に支持される存在でなければなりません。いつかはGT−Rに乗るぞ!と意気込む人々にとっての「人生の最初の1台」・・・これがGGやGHアテンザの正当なポジションだったと思います。マツダがアテンザを「フラッグシップ」にする方針となり、その方向性が一気に強まった現行GJ型では、やはりクルマが与える印象は先代までとはさらに全く違うものになりました。先代までとは「違うジャンルのクルマ」として認識される中で、プロ評論家が従来のアテンザで良いとされてきた点を頭ごなしに否定する内容の記事も見かけました(「ハンドリングが良過ぎる」だそうです・・・)。
あれ?そういえばGJアテンザと同じようにサイズアップして、ラージセダン市場に殴り込みをかけたクルマがありました。そのクルマは「鈍重化」を恐れてステアバイワイアという新機軸を打ち出してハンドリングを向上させています。実際に乗ってみましたけど、ハンドリングはまさにGHアテンザくらいに良くキレます! 正直言ってGJアテンザのハンドリングは、サイズアップ&重量アップの影響で、先代と比べてもとくにディーゼル車では大きく「退化」したと思います。それでもGJアテンザの「骨格」は、従来のラージクラスの標準から見て2割くらい軽いですから、ハンドリングもその分よく感じてしまうようです。けれども1800kgのV37スカイラインが、1440kgのGJアテンザと同等以上にハンドリングが良い!という事実には、レクサスISやBMW320iと比べるよりもずっと大きな敗北感がありました。そうなんですよね・・・GJアテンザは完全にV37スカイラインに頭を抑えられています。総合的に見て(コスパも含めて)負けています。それなのにカーメディアは「アテンザ絶賛!」「スカイラインは無視!」なんですよ・・・。どういうこっちゃ?
スカイラインとアテンザ・・・やっぱりこの2台ですね。「日本車のプライド」「セダンの復興」「ドライビング・プレジャーの追求」といった重たい課題に、勇気を持って取り組んでいるクルマは・・・。
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↓福野さんがデミオにあれこれ言ってます。なんだか心の声が聞こえます。「欧州っぽくすりゃいいってもんじゃないし・・・マツダはやっぱりちょっとダサい」・・・なるほど。
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