2015年01月12日

今のマツダにドグマはあるか?

  「R35GT-Rが世界のスーパースポーツとして認められたのは、開発者のドグマを最後まで貫いたからだ!」みたいな評論をたまに見かけます。言うまでもなくR35には性能から車両価格に至るまで明確なビジョンがあり、日産が選りすぐった少数精鋭の開発者が強烈なエゴを発揮することで、様々なハードルを見事に突破し、その性能はもちろんのこと「商品企画」として優れた完成度を誇った世界基準のスーパースポーツとして結実したという意味を持っています。

  ドグマという言葉に日産の開発者の仕事ぶりを集約するだけの、幅広い包容力があるのは確かですが、例えば「ドグマとアバンギャルドは何が違うの?」と言われるとそれほど明確な基準が存在しないように思います。「日産はドグマ」で「マツダはアバンギャルド」といった使い分けを誰かがしているというわけではないですが、そのようなニュアンスは年配の自動車評論家の間からヒシヒシと感じますし確実にそういう意識はあると思います。しかし最近ではマツダはホンダやトヨタを追従することなく、明確な独自路線を持ち続けてきたことで、それが多くのクルマ好きによって「正義」と解されてきたことから、マツダにも「ドグマ」という言葉が似合うようになってきたような気がします。

  ドグマとアバンギャルドの差は「正義」・・・なんともツマラナイ結論だと思っていましたが、先日に友人と夜のドライブに出掛けてふと「ドグマ」の本質とは何かがちょっと分ったような気がしました。彼は私よりも5歳若い元同僚です。やや離れたところに住んでいるので、半年に一度くらいの頻度で食事をしたりする仲です。彼は非常に多趣味な人間で、かつ貪欲な勉強家でもあり、5歳下とはいえその抜群の感性はとても魅力的です。しかもとても礼儀正しく、わたしのような変わり者とも親しくしてくれる非常に義理堅い人です。

  (私が思うに)そんな彼の最大の魅力は、「芸術家」ばりの美的センスです。常に周囲への配慮を書かさない礼節のしっかりした人ですが、物事への感想・・・食事が旨い不味い、夜景がキレイだ、音楽が良い悪い・・・といった評価には一切の妥協がありません。私のクルマで移動する時のカーオーディオから聞こえる音楽に対する評価などもハッキリしています。そして好きな理由・嫌いな理由をちゃんと言葉で語ってくれます。その解釈を聞いているとそれは非常に的を得ていて、横で聴いている私は感心しっぱなしです。そして思ったのですが、この語りっぷりは誰かに似てないか?・・・どことなくGT-Rの生みの親である水野さんのインタビューでの語り口です。

  その夜にドライブを終えて、ふとドグマについて考えていると、彼のような人だけが発することができるもの、それこそが「ドグマ」なのだという結論に至りました。かなり飛躍がある話ですが、彼のような人が日本メーカーで開発者のリーダーを務めたら、GT-Rに匹敵するようなクルマが生まれるのではないか?そんな気さえするのです。普段は物腰が柔らかで温和な性格が前面に出ていますが、本質的な話になると誰よりも強固な信条を、もの凄い説得力とともに繰り出してきます。もちろん彼は専門家ではないですから、水野さんのインタビューのような凄みとはいかないですけども、何とも言えない迫力があります。その言葉の強さに触れて圧倒されると、思わずちょっと茶化して冗談めいた受け答えをしてしまうのですが、内心ではいちいち言ってることが正論すぎてカッコ良過ぎるといつも思っています。そしてそんな彼が何か素晴らしいものを創り出す日がやってくることを心から願っています。

  さて最初から「今のマツダにドグマなんてない!」なんて安易な批判をするつもりは無いです。もはや「アバンギャルド」で片付けられなくなったマツダですが、「ドグマ」としてポルシェや日産のように最敬礼される存在になったのか?というとイマイチ微妙です。1000万円以上するスーパースポーツを作ることがドグマというわけではないですけど、やはりGT-Rや911ターボくらいに注目を浴びるモデルを出した方が分り易いのは確かかもしれませんが・・・。しかしディーゼルターボを各モデルに設定して、プレミアムブランドに迫るレベルの内外装へと質感をアップしたことは、ある種の経営判断に過ぎない点で評価されているのは何だか違う気がします。

  アテンザに乗ってもデミオに乗っても共通して感じるのは、クルマの本質とは直接関係ないところでの商品力アップと、期待通りとはならないハンドリングと足回りのチグハグ感が成熟不足を露呈しているところです。それでもマツダ好きの期待をこういう形で裏切るのも、ある種の「ドグマ」なのかもしれないです。どんな方向性であれ「正論」と思わせる説得力がありさえすれば、ドライブに行った彼のように明確なスタンダードを掲げて、周囲にいる気合の入っていない他者を蹴散らしながら進むだけのバイタリティが備わっているならマツダの進行中の改革を強く支持していきたいと思います。


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posted by cardrivegogo at 02:05| Comment(2) | マツダへの雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは
ご無沙汰しております。

さてドグマトアヴァンギャルド…
ぼくには難しいです。
水野氏はやはりGT-Rという車で日産というブランドを世界に知らしめた功績は素晴らしいの一言です。
日産の技術力は世界のスーパーカーに決して引けを取らないことを立証したわけですから。

マツダはというと円高やリーマンショック、大株主の撤退という経営難の中、会社の存続という重いものを背負って、資金不足の中、生み出されたのが、SKYACTIVということではないかと理解しています。

くどくなりますが、
日産の場合は、ルノーと合併するまで経営難ではあったのですが、GT-Rという記号のもと、技術力をアピールし様々な日産の車全体のイメージアップを狙ったといえると思います。

マツダの場合、マツダ車全体の方向性を一方向に統一し、マツダの技術をそれぞれに盛り込むことで、どの車に乗ってもマツダと思わせるものことによって車好きが好むということを狙ったと思います。

企業の大きさゆえどの方法がベストかというのは難しいのですが、日産ファンの多くが国内で販売されているアンダー2Lクラスに失望していることからも、やはり、そこにはコストいう言葉が、見え隠れします。

反対に、マツダは主力がアンダー2Lということもありますが、購入して満足することが多いことから、国内においては成功していると思うのですが、いかがでしょうか?
Posted by クリュー at 2015年01月12日 17:20
クリューさんこんにちは
コメントありがとうございます

日産とマツダの同クラス車を比べた時にどちらが上か?
という点はクリューさんのおっしゃるとおりで、
デミオやアクセラといった小型クラスならマツダが優勢ですね。

日産はというと、常に日本の他社に対して上から目線で、
ポルシェを本気にさせた日産なんだ!という意識の高さは感じます。
おそらく日産の考えでは、エルグランドもセレナもエクストレイルも
他社には絶対に負けていない!という自負すらありそうです。

そんな日産を本気にさせたのが、マツダのCX5なんですかね。
マツダのグイグイ来る感じは、負けず嫌いの日産やホンダの今後に
大きな影響を与える予感はあります。
そんな時が本当にやってきたならば、マツダは日本車の雄として、
世界中の自動車メーカーの敬意を集めることができそうです。

アヴァンギャルドやキワモノと言われていたマツダ車が、
世界中のクルマ作りをリードする日がやってきても、
もはや驚かないです。
私はハンドリング・マシンとしてのマツダ車が好きですが、
商品力を総合的に挙げて、プリウスやアクアに対抗できる燃費性能
まで獲得しているのはやはり素晴らしいと思います。
Posted by CARDRIVEGOGO at 2015年01月14日 00:31
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