アウディA3のスポーツHBは昨年のFMCからイメージカラーが「赤」になったので、アウディの広告を見かけると「おや!アクセラか!?」と一瞬ドキっとしてしまうマツダ党も多いと思います。外装だけでなく、黒を基調としたインパネや皮巻きを強調したステアリングの質感までもがそっくりで、アクセラとデザインが重複してしまい、アウディにとっては日本はA3が売りにくい市場になっているようです。ボディカラーはアウディがある種の意図を持って「赤」にしていて、逆に内装はマツダの方からアウディに接近しているようです。ある程度想像はできたことですが、WCOTYに輝いたアウディA3は日本ではどうも影が薄いです。ブランドの注目度は間違いなく高いはずなのに、A3というクルマそのものが日本では全くといっていいほど評価されていません。
400万円以上かけてアウディA3やレクサスCTを買うよりも断然にお買い得なことから、アクセラの需要は1年近くが経過しても、まだまだかなりの高水準を維持しています。アクセラのようにクルマの質感を上げて、従来のプレミアムブランドの同クラスモデルから強引にシェアをもぎ取るというマーケティングは、他のメーカーでも成功例が続出していて、レヴォーグやヴェゼルの空前の大成功もアクセラとほぼ同じ構図です。これを「カウンター・プレミアム・マーケティング(CPM)」とでも名付けておきましょうか・・・。これは決して”代用品”で我慢するというネガティブな消費傾向”だけ”ではなく、多くの賢い日本人が感じている「プレミアム・ブランドのギラギラした商業主義」に対する”嫌悪”から来るものとも言えます。輸入車ディーラーのセールストークが全て「こじつけ」にしか聞こえないのは、私だけなのか・・・!?と不安に思う必要はありません。実際に99%は「苦しすぎるこじつけ」です。多くの優秀な日本の消費者がそう感じていて、その上で実際に買えば300万円に達するアクセラ・レヴォーグ・ヴェゼルがとんでもない勢いで売れているのです。
今後も「CPM」戦略の日本車はどんどん増えてくると思われます。なんといっても喰われる側の輸入車ブランドがメルセデスを先頭に今も成長を続けているのでまだまだ成長の余地はたくさんありそうです。メルセデスの場合は「A」「CLA」「GLA」を立て続けに発売して、輸入車に憧れつつも傍観していた人々をどんどん巻き込んでいます。輸入車ブランドではここに来てメルセデスの突き抜けが目立ちます。VWに2000台/月の差をつけ、BMWやアウディに対してはダブルスコアになっていて、数年前のメルセデス不調が嘘のように絶好調です。結局売れるクルマには理由が当然にあるわけで、簡単に言ってしまうとメルセデスのラインナップの商品力の高さは、他のドイツ3ブランドを完全に圧倒しています。
しかしこのメルセデスの状況は2007年頃に日本で絶頂を迎えたBMWに起こった一過性バブルにどこか似ています。5年が経過した現在では値段の付かないE90が日本中の中古屋に溢れかえっているように、あと数年もすればA180が30万円で買えるようになるかもしれません。まあ5年落ちのターボ車を買うなんて愚かな買い物は絶対にオススメしたくはないですが・・・。30万円で買ってもすぐにタービンが壊れたら、下手したらエンジンオール載せ換えで100万円の”追徴金”を迫られるかもしれません。フェラーリもランボルギーニも基本はNA車だから中古車の価値が保たれているわけです。10万キロオーバーのスカイラインGT-Rやシルビアターボがそこそこ人気なのは確かですが・・・。
中古車価格の暴落は、新車の供給過多の影響も多少はありますが、大ヒットしたS13シルビアのように、個体数が多くてもクルマ好きに訴える魅力あるメカニズムを持ったモデルならば、そんなことは起こりにくいです。現在のメルセデスの量販モデルを見渡すと、クルマ好きに強く訴求するようなメカニズムを持ったものはほとんどありません。その一方でメルセデスのほとんどのモデルよりも安く手に入るトヨタ86は、アンチからあれこれ言われていますが、今後も大きく中古車価格が暴落することはないはずです。スポーツカー専用設計とトヨタの品質基準の高さは素晴らしいです。アルテッツァ、MR-S、最終型セリカ(2ZZ-GE搭載モデル)は、いずれも現役時代には輸入車ユーザーから鼻で笑われていましたが、今なお中古車市場で熱烈に支持されています。10年落ちで比較しても軽く3シリーズの2倍以上の価格帯です。
初代アクセラも類希なハンドリングを備えた名車として、10年落ちで3シリーズよりもはるかに高い中古車価格を誇っています。しかしアクセラも3代目になっていよいよこの伝統は失われていくような気がします。ガソリンエンジンはスカイアクティブ-Gへと換わり、刺々しさが影を潜め、低速トルク優先の”つまらない欧州車”みたいな味付けのエンジンになってしまいました。もちろんマツダはそれを見越してクリーンディーゼルのフルラインナップ化を図っているようですが、同時にガソリンエンジンの刺激の無さにも気がついていて、デザインを公開した新型ロードスターもガソリンエンジンは間違いないでしょうが、パワーユニットの詳細をひた隠しにするあたりに、その弱みが現れていると言えます。
もっともアクセラのライバルのCセグ車は、いずれも中古車市場では支持されないつまらないものばかりで、アウディA3も専門誌ではアウディブランド内での中古車狙い目モデルとして知られています。”走り”のブランド・マツダが「CPM」戦略を超えて過剰なまでにアウディに追従するならば、マツダが培ってきた”走りの技術”とそれを信頼する”ファン”を同時に失うことになるでしょう。最近のマツダは良くなった!という声を聞きますが、残念ながら従来のマツダモデルほど爆発的に欧州市場でウケている様子は見られません。現在の欧州カーメディアを見ていると、マツダよりも断然に日産のインフィニティQ50(スカイライン)、エクストレイル、パルサーが大絶賛されています。とりあえずこれらにガチンコとなるアテンザ、CX5、アクセラはイギリスでもドイツでもその評価は日産車に完全に負けています。
2年ほど前まで経営危機が極まっていたマツダが、日産と張り合いたい気持ちを抑えて、現実的な路線で売上を積み重ねることを選んだ事は、まちがいなく最善策だったと思います。”走り”よりも”デザイン”に注力して、商業的に成功を収めマツダを苦境から脱出させたCX5、アテンザ、アクセラの現行3モデルのコンセプトを否定することはできません。しかしレスポンスに難があるクリーンディーゼルだけで、”走りのブランド”を表現できるか?というと、やはりそんなに甘くはないです。スバルは棘のある走りを残すために、登場から25年目になるEJ20エンジンを存続させました。VWも量販モデルとは一線を画す2Lターボ&6速DSG(湿式)という、魅力あるパワーユニットをブランドの象徴としています。マツダにもスバルやVWを圧倒するような刺激的なレスポンスのユニットが絶対的に必要だと・・・私は思います。
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日本ほど過剰ではないにしても世界的にも同様の傾向です
30km/Lのアクセラが大惨敗ですし・・・。
マツダの人見さんも「燃費だけを目指すならマツダは廃業すべき」
とまで仰ってるので・・・じゃあ見せてもらおうか!
って思うんですよね。