ディヴァインDSは基本的にはCセグHBに属するスペシャルティカーです。昨今の一般的なHBデザインは、残念ながらプレミアムブランドによる安易な参入が相次いだ結果、従来のHBが持つ本質から乖離したあやうさが漂うようになりました。HBの持つ若々しいイメージは、中途半端に演出された高級感によってアンバランスな醜態を晒す駄作デザインが増えているのは事実です。基本的な骨格は量産型の汎用設計に過ぎないのに、子供だましの装飾パーツが付いているだけで高級感があると喜んでいるユーザーにとってはいいことなのかも知れないですが、「HBってダサいな・・・」といったどうしようもない諦念の情を持っている人も多いはずです。これだけ散々に”スポイル”されてぺんぺん草も生えないほどに荒涼としたHBデザインの中に彗星の如く現れたディヴァインDSは、ドイツメーカーによって破壊されてしまった、古き良きHBに新たな生命を吹き込むような可能性を感じます。
公開されたばかりで印象が鮮烈とはいえ、上のクラスのスペシャルティカーすら凌駕するセクシーでワイルドなイメージ全開のディヴァインDSは、アウディやメルセデスのアイディア不足(元々やる気はないけど・・・)を最大の商機と見たようです。プレミアムスモールカー(B/Cセグ)はさらに完成度が高まれば堅実に需要を伸ばしていくだろうという甘い憶測があります。BMWもいよいよこのクラスでFRに拘る不利を悟ったようで、ミニに加えてFFモデルを増強してきました。今後のBMWの底辺モデルは走りにそれほど興味の無いユーザーの為のアクセサリーブランドとして一定の地位を確保していくでしょう。
VWを含めやや消極的な姿勢が目立つドイツ勢と、そこをターゲットにしたレクサスCT、マツダアクセラに見られる「日本人気質」な突き抜けない平凡さを見ていて、確かにドイツ・日本に共通する「堅実さ」や「控えめ」といった美徳は感じられます。しかしそこに物足りなさを感じるのは事実で、アクセラを試しに好みのオプションで見積もっても軽く300万円を超えますし、他のブランドは500万円に迫る価格を考えると、決して「物足りない」という感情が芽生えてはいけないクルマでは?という気がします。
CセグHB全体を劇的に変えるような「創造性」はアウディA3、Aクラス、レクサスCT、アクセラといった代表的なモデル達の延長線上には全く見えてこないわけですが、それもそのはずで、もはやこのジャンルは完全に過当競争の域に入った「成熟期」を迎えています。”スクラップ&ビルト”による「刷新」を推し進めようとする動きはどのメーカーの内部にも”蠢いて”いるでしょうが、プレミアム志向のブランドが挙ってマーケティングの中心に置くアメリカ市場でCセグが全く盛り上がっていないのが致命傷です。ゴルフもアクセラも日本では高級感を売りに強気の価格設定ですが、北米ではクラストップを争うシビックやカローラよりもお買い得ですよ!という日本では想像できないような扱いを受けていて、一般的なイメージは”アメリカで一番安っぽいクルマ”でしかないです。
Cセグの「ベンチマーク」そして「日本代表」と言われてちやほやされてるゴルフ&アクセラですが、追求しているスタイルは手垢のついた”スタンダード”なものに過ぎず、そこには「新たな価値の創造」という発想はほとんどないように思います。時を同じくしてアメリカ市場向けにさまざまなサイズのSUVが生まれ、セダンが4ドアクーペへと装いを変える中で、あまりにも変化に対して後ろ向きなCセグHBはどうしても魅力に乏しく見えてしまいます。もちろんそれと同時に「変化するCセグ」というコンセプトで商機を見出すメーカーもあるはずで、そんな兆候が今回のパリモーターショーで発表された、ディヴァインDSとアウディTTスポーツバックの2台の注目カーなのかなと思います。
MQBの鎖に繋がれているとはいえ、エクストラワイドな設計で独特のオーラを放っているTTの5ドア版「スポーツバック」は、VWグループが自らゴルフやアウディA3の欠点を認めた上で(どちらもWCOTY車ですが)、この2台を補完するスペシャルティカーとしての位置づけているようです。そのTTスポーツバックに対して、地元フランス・シトロエンの意地が炸裂したようなディヴァインDSは、MQBでは採用出来ないであろう「Bピラーレスの観音開き」という設計がとてもエレガントです。アウトバーン仕様のハッチバックでは御法度と言える構造と切り捨てる評論家もいそうですが、ヴィジュアル的にはこれまでに1台くらいはあっても良さそうなほどのインスピレーションを感じます。Cセグのリトラクタブルハードトップモデルを展開しているPSAグループならば、プジョー308カブリオレの構造を使えば設計のハードル自体はかなり低そうです。
Bピラーレス”観音開き”といえば我らがマツダのRX-8がすぐに思いつきます。スポーツカーとしての存在価値はRX-7の域には届かなかったかもしれないですが、”亜流”のスポーツカーとして厳しい意見がある一方で、一般ユーザーからの異例なまでの熱い支持を受けた類希なる名車です。これは言うまでもなく”観音開き”による新たなクルマ観が、渇望して乾き切った一般ユーザーのハートを見事に打ち抜いた結果だと思います。この成功に味を占めてマツダが観音開きのクルマばかりを増やしたらやや興ざめですが、このアイディアは2014年の現在でも非常に有効なようで、BMW i3や次期7シリーズと思われるコンセプトカーにも採用され、大いに注目を浴びました。
BMW i3はテスラモデルSと並んで、EVのイメージ向上に大きな足跡を残しましたし、観音開きの7シリーズ・コンセプトは、Lセグ市場で先行するSクラス・パナメーラ・レクサスLSをまとめて追い越していくくらいの爆発力を秘めているように感じます。RX-8が観音開きのオリジナルだ!と宣言するのは語弊があるかもしれませんが、”観音開き”が持つ鮮烈な”市場破壊力”を最初に行使したクルマとして殿堂入りの資格は十分にあると思います。まだマツダによる単発的な成功としか見られていないですが、i3、新型7シリーズ、ディヴァインDSと後続車が次々とこの手法で成功した暁にはRX-8が再評価されるのかもしれません。なんだか「カリーナEDが最初だ・・・」とか言ってるステレオタイプな評論家みたいでちょっとはずかしいですが、4ドアクーペブーム(2003~)のように日本メーカーのアイディアが10年後に花開くパターンとして”観音開き”とRX8が盛んに語られそうな予感がします。
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私もアテンザを他の追随を許さない素晴らしい車だと思っており、一方でそれが少数派だと知っていましたので、このようなblogがあることに驚きました。
私は初代アテンザを所有して運転の楽しさを知り、2代目アテンザでその美しさに惚れ込みました。その後輸入車も含め何台か乗り継ぎましたが結局アテンザと比べるとどこか物足りず、近く初代アテンザ(スポーツ20C)か2代目アテンザ(セダン20E)をまた買い直そうと思っています。
今後も楽しく読ませて頂きたいと思います。
コメントありがとうございます
オーナーバカかもしれないですが、
2代目アテンザは超絶デザインだと思います。
2代目後期セダンの乗り心地と静音設計は、
絶対に買わないと後悔すると感じたので2012年7月に買いました。
直4ショートストロークNAも
スカイアクティブとかいうコストダウンの結果消滅してしました。
いまのマツダ車はどうもディーゼルありきで、
ガソリンエンジンはいまいちだと感じます。
ロードスターもロングストロークになるようですね・・・。
出来れば初代アテンザやNCロードスターをコレクションして、
名機MZR2.0の様々なヴァージョンを楽しみたいです。
私もシトロエン・ディヴァインDSをみてかなりグラマラスなデザインだと思いました。
これだけのスタイルは実車では平面化した昨今の車ではきっと太刀打ちできない気がします。
この車にどのようなメッセージ性があるかと考えると、服飾系のブランドとのコラボによって他メーカー独自の高級感とは全く違う視点からの高級感という気がしますがいかがでしょう?
日産・BMWなど、かなりチャレンジ性のあるEVが続々と発表されてきてますが、不思議なことにセダンではないというのが気になっています。やはりセダンはもう時代遅れ、成熟した自動車社会ではHBが主流ということでしょうか? スタイリッシュ=スポーツというふうになって同義語になりつつあるような気がします。
背が低くワイドという=スポーツというのもまた、今まで通りのような…。革新あるデザインを見てみたいなと思いました。
コメントありがとうございます
シトロエンDS4はCセグでもベストなデザインですが、
もはやVWゴルフ的なパッケージの限界も顕著です。
現行のA3・レクサスCT・アクセラのどれもが退屈過ぎます。
何かしらのブレイクスルーが望まれていて、
シトロエンが真っ先に方向性を示してくれました。
EVは航続距離が短いのでセダンにする意味は無いと、
テスラ以外のメーカーは考えていると思います。
私の住んでる地域ではHB乗ってるのはおじいさんばかりで、
スタイリッシュなイメージは全く無いですね。
アクセラじゃ六本木ヒルズでも横浜中華街でも江ノ島でも
駐車場の周囲のクルマに圧倒されて尻込みしちゃいます。
学生の頃にカローラランクス乗っていてトラウマになりました。
背が低くワイドはありふれてますが、
4000mmそこそこの全長で1900mm超の車幅になると、
なんだかスーパースポーツみたいな貫禄でますよ。
ウラカンとほぼ同じサイズのTTってすごくないですか?