同じように某老舗高級ドイツメーカーの担当者もVWゴルフ7を分解して、このクオリティでは絶対にこのクラスのコストには収まらない!と嘆いたんだとか。マツダとVWの品質を裏付けるメディアの作り話かもしれないですが・・・。それでもやはり「名車」と言われるクルマは今も昔も設計にはこだわりがあって、所有者に「ここがいい!」と言わせるだけの何かを持っています。けれどもそういうクルマを作ることに否定的な空気が、2000年代には確実にあったと某世界最大手のメーカーのトップが明言して懺悔していたりします。
若い設計者はやる気満々なのに、定年間際の役員の頭はカチコチで、閉塞的な市場に風穴を開けそうな斬新なラグジュアリーカーがあっさりとボツに。しばらくの間レクサスでさえも2ドアラグジュアリーには完全に及び腰だったようでラインナップにはありませんでした。10月に「RC」という2ドアモデルが久々に発売されますが、それでもBMW6シリーズやメルセデスSクーペくらいに突き抜けたラグジュアリーなイメージはないです。どちらかと言うと客がほしいほしいと騒ぐから仕方なしにつくりましたといった感じです。
2ドアの高級車は一般に会社名義では買えないそうなので、1500万円〜2000万円くらいする2ドア(スポーツカーを除く)をカタログモデルで売っているメルセデス、BMW(ロールスロイス含む)、ベントレー(VWグループ)の3ブランドはやはり別格中の別格と言えるかもしれません。これらはその他大勢のブランド(レクサス含む)がまず絶対に出来ないであろうことをやっています。つまり超高級車を個人名義で買う事ができる本物の金持ちのハートを見事に掴んでいます。レクサスが目指す「最高品質」「洗練」の先にあるはずの世界最先端のラグジュアリー「6シリーズ」「CL(Sクーペ)」「コンチネンタルGT」をなかなか追いかけようとしないあたりにレクサスの未熟さが伺えます。
ここで先ほど「頭カチコチ」と揶揄した某大手メーカーの役員様の思慮遠謀に何となく気がつきます。欧州市場にはまだ手掛かりすら作れていない後発のレクサスが、欧州自動車文化を象徴するような「フルサイズ2ドアクーペ」を作るのは、やはり常識的に考えてまだまだ時期尚早と言えます。たとえ欧州では知られてなくても、クルマに自信があるならば作ってしまえばいいとも思うのですが、例えばBMWと比べてレクサスは特に後席の乗り心地に力を入れた設計が特徴になっているので、たとえLSのような超絶クオリティの設計を持ったクルマでもそのまま2ドアというのは、いろいろと体裁が悪い部分があるようです。
実際に役員様にとって「売れないから」反対なのか、「体裁が悪いから」反対なのかはどちらも考えられるところではありますが、世界最大の自動車グループの役員ですから「クルマ文化に対する見識」からの判断であると信じたいところです。そしてその1つの根拠に、今回発売する「RC」が挙げられます。これまではオープンモデルのISの2ドアが細々と売られてましたが、ハードトップクーペの2ドアはありませんでした。なぜ今回はそれを作ったのか?それはおそらく新たに投入されたIS・GS用の「新型シャシー」に絶対の自信があるからだと思います。同クラスのドイツブランド車(あと日産車)を圧倒することを目標に作られたGS、ISは狙い通りに勢力図を塗り替えることに成功しました。ただし冒頭の「頑張って作ったクルマはそれほど売れない」の例に漏れずにセールス的にはいまいちでしたが・・・。
さて翻ってマツダですが、デザインの大胆さがウケている一方で、このメーカーもトヨタ以上に高い「見識」を持っているようで、安易な2ドアモデルには否定的な姿勢を採っています。マツダの走る姿が眩しくもある新デザインに2ドアモデルを期待する声は少なくないと思いますが、マツダ首脳部が持つ気高い「見識」を乗り越えるだけの2ドアのスペックを作る余力が今のマツダにはどうやら無さそうです。レクサスはトヨタグループの余裕の資本力を使って、超絶スペックのシャシーと大排気量エンジンで満を持して自信満々の2ドアクーペを作っていますが、悔しいことにマツダにはそれに追従するだけの力が無いのです。
バブル期に遡ってマツダのラインナップを改めて眺めると、トヨタ、日産、ホンダといった大手に先行してラグジュアリーなクーペやセダンを仕掛けている節すらあったようですが、今では決定的と言える差が付いてしまいました。メルセデスやBMWが手抜きして作った廉価モデルが相手ならば、現行のマツダのモデルでも十分に上回ることが出来るでしょう。しかしこの両ブランドの頂点には、現在のマツダではとても辿り着けないし、そしてレクサスでさえもおいそれと近寄れない領域のクルマが作られています。「3シリーズには勝てるけど6シリーズには近づくことすら出来ない」これがマツダの悲しい現実です。
沢村慎太朗さんが、発表されたスバルWRXを「何か惹き付ける力がある」と評していらっしゃいました。フェラーリのフラッグシップであるベルリネッタを「もう特別ではない」と吐き捨てるほど良くも悪くもスケールがデカすぎる発言をする、異次元の評論家から大絶賛と言える「お墨付き」を得たスバルは素直に羨ましいと思います。この方はかつて自著で「本質的スポーツカーはポルシェ911とマツダロードスターだけ!」と言い切ってくれたこともありましたが、果たして今のマツダに再び素晴らしい評価を獲得するだけの「スペシャル」な要素が残っているのでしょうか?
レクサスの”アブソリュート”HVそしてVWの”僅少”排気量ターボという、現代の強烈なまでの「エコ・スペシャル」なトレンドは、いよいよ世界中の名門ブランドをも巻き込んだ大きなうねりとなっています。そんな中で、かつてロータリーを信奉する「ガスイーター」として世界にその名を轟かせたマツダですから、トレンドに合わせてマツダ版THSU(トヨタから提供されたHVシステム)を開発してみても、ブランドイメージとはズレがあるようでリアクションはほぼ「皆無」・・・。世界に「経済性」でアピールする日本車メーカー群にはあるまじき仕打ちをユーザーから喰らっています。
まもなく登場すると言われる直3ターボのBMW3/5シリーズもおそらくアクセラHVと同じように市場から完全に無視されると思われます。マツダとBMWの短期的なヴィジョンはいよいよ「ディーゼル頼みのブランド」ということになっていくようですが、日産のディーゼル撤退に見られるように欧州・日本の行政による規制強化から今後あまり見通しが良いとはいえないみたいです。
敢えてマツダに厳しいことを言うならば、メルセデスやBMWのシェア拡大のために量産されている廉価な「似非高級モデル」と比べられるような薄っぺらいクルマを作って、俄に評価されて喜んでいたのでは、結局のところHVありきの「大衆車トレンド」に呑み込まれてしまうのは確実です。ホンダやスズキのような「技術屋」としての存在を自覚し、熱効率を極めたエンジン作りで次世代エンジン開発という名の”消耗戦”を繰り広げるのか?それともジャガーやアルファロメオのように再起を期して「洗練」「高性能」にこれまで以上に磨きをかけ、”勝ち組”高級ブランドに必死に喰らい付いていくのか?マツダにとっては「究極」の選択が迫られているようです。
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またまた失礼します。
マツダとBMWのディーゼルの短期的なヴィジョンについてですが、
どうも2024年のアメリカの燃費規制の法律が絡んでいるように思います。
これは2024年までに販売台数の19.5%をZEV(Zero Emission Vehicle)
にしなければならないということがマツダとスバルにあてがわれているという話です。
つまり水素燃料電池車かあるいはバッテリー電気自動車を販売しないとカリフォルニアで売れないというかなり厳しい法律のようです。同様に欧州でも2020年までに95gCO²/km という二酸化炭素の排出量の規制がのしかかるようです。私の調べではメーカーの平均燃費が31q/Lということのようです。つまり対外的な規制に対して両者どうしても燃費の良い車の開発販売を強制されるわけですから、従来の高出力の車は出しにくいのではないかという気がします。
Mazda3 SKYACTIV-CNGコンセプトが参考出品されたのもその経緯のような気がします。
私達車好きにはますます、面白味のない車が続出しそうな時代がもうそこまで来ているのではないでしょうか?
コメントありがとうございます
いろいろ教えて頂きましてとても勉強になりました!
カリフォルニアはやたらと厳しいらしいですね。
タクシーも一般車もプリウスが多くて、
日本のクルマ屋じゃ修理できないHVシステムのトラブルも
アメリカ人はネット情報だけでDIYで直してしまうとか、
オートメカニックで読んだことがあります。
せいぜい200kmしか走れないEVかトヨタがやっと700万円?で市販する水準のFCVの比率を20%って根本的に政策が間違っているんですかね。テスラのようにレンジエクステンダー積んだらゼロエミッションじゃなくなりますし・・・。
確かにあまり明るくない未来かもしれないですが、
私はそこまで悲観すべきではないと思ってますよ。
クルマが楽しくなくなったら、トライクでも買おうかな。