しかし「ハンドリング」やら「アクセルフィール」やら最初から言い出したところで「それはオマエの主観だろ!」と自分で突っ込みを入れたくなりますし、それ以前に全く伝わらない可能性すらあります。結局クルマにおける唯一無二の絶対的(普遍的)な価値観って「ブランド力」なんだという事に気がついたりします。マツダという「ブランド」は一般にはほとんど浸透していないから、BMWという「ブランド」を代用して説明する・・・なんて愚かなことを。
ただし、「BMWのコピーです!」だけでは、まったくもって言うだけ損で、「なんでBMW買わないの?」という話になっちゃいますし、結局のところ懐事情などを晒すだけの醜態です。「BMWに対抗して作られているんですけど、やっぱり日本人の繊細な感覚が行き届いていて、運転していて楽しいんですよ!」くらいが無理なく理解してもらえるベストな説明じゃないかと思います。
マツダの「ブランドの本質」みたいなものを勝手に語る(ねつ造する)とするならば、「日本人の繊細な感覚に合った乗り味」なんてところが、このブランドの最大の美徳です。しかしマツダ自体がどう発信力してよいか迷っている部分が大きいように感じます。「スカイアクティブ」「鼓動」という表現が、果たしてどこまでマツダ車の魅力を語れているのか?と考えるとちょっと疑問です。むしろ「SHINARI」のようなコンセプトカーに付けられた車名の方がブランドの核心を端的に表しているような気がします。
なんとかこのニュアンスを一般の人に短時間で伝えるだけの表現力が私にあればいいのですが、マツダが現在広げている大風呂敷をまとめあげるのは至難の技です。そもそも「スカイアクティブ」というネーミングセンスは「Vテック」や「エコブースト」と同じように完全に大衆ブランドのものであり、その一方で「鼓動」というやや自意識過剰気味な表現からはプレミアムブランドが持つ「自信」を想起させますから、すでにここからしていくらかのギャップが存在しています。
当然ながら「鼓動」という表現は北米で使えるわけはなく、アメリカのサイトを見渡しても「skyactive-technology」という商標しか見られません。よってアメリカ市場での位置づけでは完全に大衆ブランドで、アメリカ雑誌では3万ドル以下のカテゴリーに押し込められます。その中でスカイアクティブ3兄弟(アテンザ、アクセラ、CX5)はホンダ、フォード、VW、トヨタ、ヒュンダイ、キアといった巨大メーカーのライバル車を相手に「無敵」の強さを誇っています。「最強の大衆ブランド」みたいな感じが、アメリカでのイメージになりつつあるようです。
それが日本では、「鼓動」というデザインテーマで完全にプライベートブランドを気取っちゃっています(そういう風に見えます)。日本市場の嗜好を考えると極めて妥当な戦略ですが、これが思いのほか上手くいっていない感があります。CX5が牽引していた間は好調でしたが、やはり「スカイアクティブ」と「鼓動」のダブルスタンダードを掲げてしまったブレがじわじわと効いてきているかもしれません。
「ZOOM-ZOOM」も一般レベルではほとんど意味が理解されていなかったですから、「ブランドイメージ」構築する完璧な「標語」というのはなかなか難しいとは思います。デミオからアテンザまでを同じディーラーで同じイメージで売るとことの難しさは、ホンダや日産も痛感しているようですが、マツダにも現実的な問題として降り掛かってくるかもしれません。
ただしマツダのイメージの使い分けは実に見事で日本の雑誌とアメリカの雑誌ではアテンザ(MAZDA6)が全く別のクルマか?と思うくらいに描かれ方が違っています。日本の印刷物ではやたらと高級感あるのに、アメリカ雑誌ではまさに大衆車に見えます。フロントナンバーの有無くらいしか大きな違いは分らないのですが・・・。
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