2014年06月12日

マツダはなぜ売れるようになったか? その2

  前回は、トヨタ、VW、GMを相手にして、マツダが生き残っているだけでもスゴいのに、売上を伸ばしつつあるということの「理由」として、インターネットの普及でクルマにあまり関心が無い層にも自宅に居ながら、手軽に、「無料で」、詳しい情報が手に入るようになったことを挙げました。インターネットの普及は経営規模の格差において発生する、マスメディアを使った「広告宣伝費」の差を大きく縮めるパラダイム変化と言っていいと思います。

  マツダ、スバル、メルセデス、BMWといった中堅メーカーだけでなく、一旦は破綻したジャガーやボルボが瞬く間に復活を果たした「ストーリー」の裏にも「ネット」の力が多分にあるはずです。これら6社の共通点を考えると、生産規模では大手に全く及ばなくても、「大手メーカーの同クラス車よりも性能に勝るクルマ」を作り、「自社サイトでその優越性をわかりやすくアピール」できるならば、経営規模のハンデは十分に克服できるという世の中へと変わったと言えます。

  トヨタ・VW・GMがさらに「ネット」を駆使すれば、さらに効率が良い販売につなげられるのではないか?という疑問があると思いますが、例えば年間800万台超の生産・販売を誇るVWグループを調べると、グループの利益の大半を稼ぎ出しているのはアウディで、低価格車を担当するシュコダの収益性は低く、セアトに至っては赤字を計上しています。また高級ブランドのベントレーやポルシェもほぼ赤字すれすれであり、VW本体にしても販売台数の割にアウディを大きく下回る収益しかあげられていません。VWの屋台骨は完全にアウディが背負っています。つまり800万台や1000万台規模のメガグループが、同一のクオリティで存在することは不可能で、結局のところは株価対策の「寄せ集め」に過ぎません。「パレートの原則」がここでも適用できて、2割のアウディが全体の8割の収益を稼ぎ出す構図に近いと言えます。メガグループはディーラー網の構築などには一定の効果はあるでしょうが、ネットを使っての「宣伝」、そしてメルセデスは早くも着手しましたが「販売」までが始まったら、そのメリットさえも弱点に変わる可能性があります。

  VWの稼ぎ頭アウディのグローバルでの販売はBMWやメルセデスとほぼ同数であり、BMWやメルセデスはいうならばVWの稼ぎ頭の部門だけが独立して1つのメーカーになっているわけです。2004年頃からのアウディの躍進は世界の高級車市場を席巻する勢いがありましたが、この頃はまだBMWやメルセデスにとっては不利なマスメディア広告が一般的な時代でした。両者は広告宣伝費を捻出するために、クルマの利益率をさらに高め生産ラインを次々に海外に移すなど、なり振り構わない構造改変(改悪)を行い、結果的に品質低下が指摘されるようになりアウディやレクサスの驚異的な短期間での成功を許す結果になりました。

  確かに「VWとアウディ」、「トヨタとレクサス」、「オペルとキャデラック」というグループによる「シナジー効果」は非常に高いです。アウディのCセグ車はゴルフの基本コンポーネンツを使えるので、Aクラスや1シリーズでは対抗できませんし、レクサスの武器となっている静粛性&HVの技術はトヨタの研鑽の成果です。またグローバル展開が始まったキャデラックが、欧州や日本で十分に勝負できるスポーティなセダンを短期間で作り上げたのも、GMが破綻しても手放さないドイツが誇る実力メーカー・オペル(ドイツ版日産?)の開発力が大きいと言われています。

  しかしいくら技術的に優れているとはいえ、大衆ブランド車との技術の共有を好ましく思わないユーザーが多いのが、プレミアムブランドだったりするので、一長一短があるように思います。ちなみにメルセデスはユーザーに悟られないように、三菱やルノー=日産の技術をブランドに取込んで開発力の後進性を補っていますし、BMWも小型車のノウハウを英国の名門ブランド・ミニを傘下に収めることで、その技術を貪欲に吸収しているので、まもなく発売されるFF車(2シリーズMPVとX1)はなかなかの走りになるのではないかと予想されます。

  さてそんな権謀術数が飛び交う、怪しげな「プレミアム・セグメント」に向かって不気味なまでに「接近」してきているのがマツダです。前々回の記事でも触れましたが、作るクルマは次々と「クラスナンバー1」の評価を獲得していて、従来のライバルである大衆ブランドの中では完全に頭一つ抜け出した存在になっています。アメリカではすでに「フォーカス&ゴルフに圧勝!」というテスト結果が次々に出ているわけですが、倒したゴルフだって日本で発売されているAクラスやV40、1シリーズといった輸入車Cセグに完全勝利した実力車ですから、アクセラに関してはプレミアムブランドも完全に「喰った」といっていいかもしれません。元々Cセグはファミリア以来のマツダの「テリトリー」であって、新参の「プレミアムなんちゃら」に負ける訳にはいかないという意地もあったでしょう。そしてそもそも遡ってみれば「マツダ→フォード→VW」という技術伝播があるわけですし・・・(VWはフォードの開発責任者を引き抜いてゴルフVを設計しました)。


またまた長いので次回に続けます。

リンク
最新投稿まとめブログ
  

↓データのみですが、参考文献です。内容は酷いです・・・トヨタを過小評価してないですか?といった感じ。はやくも現実は本書とは別の方向へと進み始めている気がします。

posted by cardrivegogo at 14:03| Comment(0) | マツダの戦略 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。