2014年05月22日

W124 が今のマツダの目指す方向らしい

  オートメカニック6月号になかなか興味深いインタビューがありました。まだ若いマツダの開発担当者が短い言葉の中に何やら「核心」めいたことをたくさん散りばめていてとても印象に残りました。簡単に言うと「オレが入社してからマツダは大きく変わったんだ!」といった内容です。彼が入社する2006年頃のマツダ車は、フォード傘下であまりにハンドリングを意識し過ぎた設計になっていた。それは面白いかもしれないけどクルマの本質ではないし、どう考えても落ち着きがなかった。「やはり真っ直ぐ走るのが本物のクルマだ!」というのが当時からの彼の主張だったようです。

  入社まもなくでマツダの中堅の開発者と「この意見」で意気投合したようで、話合う中で、「マツダはまだ全然理想を追えていない」という結論に達したのだそうです。本当のクルマ好きに訴えるためにはどうすればいいか・・・、ということでいつも話題に上がったのがメルセデスの名車と知られる「W124」で、これを一つの理想型と位置づけていたらしいです。

  教科書的に表現すると、バブル期の日本で大ヒットした高性能なメルセデスの象徴であるW124は、「最善か無か」というコンセプトを最も端的に表したクルマだったようです。外見も内装も見事なまでにメルセデスのオーラが宿っていて、走らせると他のブランドとはハッキリと一線を画す、まさに「プレミアムブランド」のクルマらしい乗り味で、プロの評論家から素人のクルマ好きまでだれもが賞賛して、ケチが付くことはなかったとか・・・。ただし4気筒モデルは非力で退屈だったという意見もあるようですが。

  いくら伝説の名車とはいえ、20年も前に生産を終えたクルマが理想というのも、なんだか想像力に乏しい気がします。まあW124の全てのグレードに乗ってみないことには何も解らないことだらけなんですけど、W124の後継として販売されているメルセデスEクラスは、代を追うごとに品質の低下が指摘されるようになり、「メルセデス神話」も20年余りで完全に過去のものになったようです。

  それにしてもマツダは懲りないなと思います。学習能力が無いというわけではないかもしれませんが、企業風土というべきか・・・。メルセデスがコストがかかり過ぎるとして20年前にやめたクルマ作りに憧れてしまう開発者がいっぱいいるようです。世界中のメーカーの開発者が同じような想いを抱えているのかもしれませんが、マツダからはその声がメディアを通じて漏れてしまうくらいに鬱屈したものなのかもしれません。

  歴代のマツダは常に高コスト体質が仇となって「沈没」を繰り返してしてきましたが、その背景にはやはり「W124を作りたい」みたいな想いがあったんじゃないですかね・・・。しかし時代は変わってW124の良好な個体なんてほとんどなくなり、乗り換えるクルマが無い!なんて声が溢れているくらいですから、マツダが作ってやろう!という気概が案外報われるかもしれません。

  まあインタビューで一番強調されていたのは、マツダがW124をそのまま再現するのではなく、マツダ車が現代の「W124」と褒め称えられるような、孤高の地位にある「全能」の乗用車を作りたいということでした。一説によるとレクサスLSの原型である1990年に発売されたセルシオは、このW124を参考にして開発が進められたと言われています。開発が行われた1980年代終盤はバブルの最盛期ですからトヨタも開発資金は青天井だったわけですが、こんな時代のクルマを再現しようと意気込む、若きマツダの開発者のブットんだ感性には果てしない可能性を感じます。次期アテンザはさらに大化けするのでしょうか? 貯金でもしておこうかな・・・。
  

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ラベル:メルセデスW124
posted by cardrivegogo at 11:52| Comment(3) | マツダの技術について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
のっちさん、こんばんは!

あぁ、またW124ですか…。
これって車を趣味にしてる人間からすると
必ず事あるごとに出会うんで食傷気味なんだよな。

全盛期の車に乗ったことがないので
正直わかりません。
が、数年前に乗らせていただいた個体は
300Eだったと思いますが、実際は「?」って感じでしたけどね。

まあハードルが上がり過ぎてたんだと納得させてますが、
私見としてはW124を語るときはあくまでも「当時の」という枕詞をつけて欲しいな、と。
「最善か無か」とか、そういう色眼鏡とかノスタルジーが
記憶を虚飾してるとしか思えないんですよね。

ただの全うなセダンでしたが、それはそれで素晴らしいのかもしれませんね。
確かにあれなら全能というか
もう少しチープにオールマイティという感じです。

2006年入社の若者が憧れる車かどうかは別にして
リアリティが無さすぎです。

W140にも乗らせていただいたことありますが、
あれの後席に座れるようになったら人生「あがり」だな、
と思った記憶があります。
絶滅確定の恐竜みたいな車でしたが、
あちらのほうがメルセデスらしさがありましたよ。


Posted by yatsume at 2014年05月22日 22:57
yatsumeさんこんにちは
コメントありがとうございます。

雑誌に乗っかった無責任記事に
私ではとても付けられないオチを頂きましてありがとうございます!
2006年で大学院卒だそうですから、
おそらく我々と同年代(同学年?)だと思います。
3年前に中古で300Eを購入したそうなんで、
単なる「頭でっかち」というわけではなさそうですよ。

マツダがW140を作るとか言い出したら
誰にも相手にされないかもしれないですが、
W124ならば・・・という高度な「ステマ」ですね、きっと。
ハンドリングの「直進安定性」という点では、
少しは説得力があるなと思いましたが、
やはりyatsumeさんの意見を見て、
所詮は20年前だよな、という結論が妥当だなと・・・。

Posted by CARDRIVEGOGO at 2014年05月23日 21:57
はじめまして!W124と同年代のW201(190E)と現行MPV(LY3P)に乗ってる者です。

オートメカニック6月号を読んでいないので何とも言えないですが、同じ内容のものを日経ビジネスオンラインで拝見しました。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20150127/276769/?P=3&mds
バックナンバーは無料の会員登録をしなければ見れませんが、ぜひ拝見いただければと思います。

この記事では、マツダのステアリング関係を担当した虫谷氏がW124について語っています。

私はW124を運転したことがないのですが、同年代のメルセデスに乗っているので、W124の感じはなんとなく認識しています。

上記の記事の中で虫谷氏は「別に今の技術を否定している訳ではないですよ。否定している訳ではありませんが、124シリーズには人間の感覚に最も近い、精密機械のように無垢なフィーリングが出ていた。余計な介入が一切ない、何かこう……路面を手で触っているんじゃないかと思わせるような感覚があるのは、やっぱりあのクルマを置いて他にないですね。」とあるので、W124のステアリングは究極のフィーリングの一つではないかと思います。

しかしW124は油圧のボール&ナットというコストの掛かるものなので、これを現在主流のラック&ピニオンでどう再現するかが重要なのかなと思います。

W124を参考にしたフィーリングは現行のプレマシーからということなので、私が乗っているMPVはそれより前ですが、どことなく雰囲気はW201と同じ感じがします。

現在のSKY ACTIVのフィーリングも好きですが、Zoom-Zoomのフィーリングも他メーカーの現行国産車に負けない出来だと思っています。

当時のメルセデスもナチュラルなフィーリングのため、短時間の試乗ではどこが良いのか分かりにくいかもしれません。しかし長く乗ると良さが体感できます。
なかなか難しいと思いますが、一ヶ月間W124を乗っていただければ、所詮は20年前というイメージは払拭されると思います。

取り留めの無い文章で失礼しました。またブログを楽しく拝見させていただきます(^^)/
Posted by M... at 2015年02月14日 10:03
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