何より残念なのが、全部門をドイツメーカーに独占されてしまったことです。マツダとしてはまた来年に「デミオ」で挑戦して、再来年には「ロードスター」で挑むことになるのでしょうが、果たして「鼓動」デザインは「デザイン賞」に輝くことができるのでしょうか? 去年の「アテンザ」を含めて4年連続で「デザイン賞」に最終ノミネートなんて快挙を達成できたら素晴らしいです。
そもそも去年と今年と連続でノミネートされたのはもちろんマツダだけ!しかもライバルは「アストンマーティン」「ジャガー」「BMW」「メルセデス」の「超」がつく一流ブランドばかり!!・・・マツダがこの面々を乗り越えて栄冠を掴む為には、デザイン「だけ」ではダメなのかなと思ったりもします。ブランドとしての「正統性」がこのデザイン賞では問われているのかなという気がするのです。まだマツダにはBMWを乗り越えて受賞するだけの「格」が備わっていない!と言われているのでしょうね。
「プレミアム」という言葉に「軽薄さ」すら感じるご時世ではありますが、やはりメルセデスもBMWもブランドのトップに君臨するクルマには「特別な魂」が込められています。「フラッグシップ」(S/7)があり、「象徴」(SLS/現在8製作中)があって「ブランドイメージ」は力強く発揮されているわけです。いくら福野礼一郎氏の「比較三原則」(ルボラン6月号)でアクセラが「A」や「1」に勝利したところで、マツダが「プレミアムブランド」としての何かを得たとは言えません。
バブル期までのマツダは、他の日本メーカーのどこよりも「プレミアムブランド」化に積極的だったとよく文献で見かけます。1980年代はまだまだ小学生であり、おまけに父親が免許証を持たない家庭に生まれ、自動車すらほとんど乗ったことの無い生活だったので、当時のマツダの雰囲気などはまったく分かるはずもなく・・・今になって完全に後追いながら自動車図鑑を見て「なるほどプレミアムブランド志向だな」と頷いているわけですが・・・。
マツダの過去を振り返ると、そこには幾多の濃密な「ドラマ」が詰まっていて、その一つ一つの逸話に「クラフトマン・シップ」を多いに感じ入るわけです。例えばメルセデスやBMWは「ナチス協賛企業」としての十字架を背負っていて、逆に日本の三菱やスバルは栄光の歴史として「戦争協力」が語られている部分もあるわけですが、マツダの立ち位置はそのどちらでもなく、三輪車メーカーとして「陸海軍共同管理」工場に指定され、軍需車両を生産し続けた結果、本拠地・広島に悲劇を招いてしまうというネタにも出来ないほどの戦争被害者メーカー。同じような境遇なのが、ソ連軍に接収された歴史を持つアウトウニオン(現アウディ)でしょうか。
その後、戦後の混乱期にダイハツとともに「三輪トラックメーカー」として日本経済の復興を支えました。「高度経済成長期」の後半、首都高や名神が整備されると新たに「4輪メーカー」として実用車を次々と発売し、日本が西ドイツを抜いてGDP世界第2位に躍り出る前夜には、「ロータリー」を搭載した市販モデルを発売し、日本車のイメージを世界最先端に近いところまで押し上げます。
その後まもなく、オイルショックに見舞われ、渾身のロータリーが、「風評被害」で俄に販売不振に見舞われました。この頃の新興メーカーはことごとく「風評」被害に遭っているようで、ホンダも1966年(五輪後の景気後退時)に「N360欠陥車事件」という災難にあっています。とにかく不況になると「瀕死の重症」を追うのは40年以上前からの日本の3番手以降のメーカーの宿命のようです。
そんな暗黒の70年代を潜りぬけたマツダは1980年に5代目ファミリアの大々ヒットで不死鳥の如く「復活」しますが、ここから悪しき「プレミアム」路線へと付き進んでいきます・・・。あとはよく語られているようにバブルの崩壊で地獄に叩き付けられ、2002年頃から再び復活を果たし、2009年のリーマンショックで再び「再起不能」「倒産」が囁かれるほどの転落を経験し、そして2012年に「鼓動」デザインとともに復活を果たし、「WCOTY」の主役へと登り詰めたわけです。
世間ではプレミアムブランドのストーリーとして「ポルシェの復活」が有名ですが、マツダはもうそれを3度も味わっています。・・・そろそろ学習しろ!とかいう声が聞こえてきそうですが、こんな愚直なメーカーだからこそ「ポルシェの3倍楽しい!」と言ってもいいのではと思うのですが・・・。
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・マツダは楽しいクルマを造ってくれる随一の
国産メーカーですから
これからも頑張ってもらいたいし応援しますよ!
コメントありがとうございます。
マツダの歴史はとても調べ甲斐がありました。
正直言ってこんなに懐が深いメーカーだと知ったのは
マツダ車を買ったずっとあとでした。
感動できるクルマを作るメーカーには共通して
やはり「苦労した過去」がありますね。